(2023/8/31 05:00)
10万人以上の犠牲者を数えた関東大震災の発生から1日で節目の100年となる。経済的な損失は当時の国内総生産(GDP)の約37%にも相当する未曾有の大震災だった。政府の地震調査委員会によると、30年以内に首都直下地震が発生する確率は70%に達する。大震災を自分事ととらえ、「その日」にいかに備えるのか改めて考えたい。
内閣府は2023年版「防災白書」で関東大震災の特集を組んだ。当時の被害を検証し、教訓とすべき対策を盛り込んでおり参考にしたい。首都直下地震を念頭に置くと、当時の東京圏(1都3県)と比べ現在は人口構造が大きく変化した。1920年(大正9)の768万人に対し、2020年は約5倍の3691万人にも及ぶ。当時より高齢化が進んでおり、震災後の高齢者ケアにも心を配りたい。
100万人超が避難した当時から勘案すると、人口の大都市集中が進んだ現在の東京圏での大混乱ぶりは想像に難くない。東日本大震災の時もそうであったように、道路交通のまひ、膨大な帰宅困難者と避難者、物資不足への十分な対策を講じておく必要がある。中でも被災後は正確な情報を見極め、適切な行動をとる冷静さが求められる。
防災白書は、デジタル化の進展で被災状況の迅速な把握が可能になった一方、交流サイト(SNS)などを通じたデマの拡散を警戒する。関東大震災では火災で生じた爆発・飛び火・井戸水の濁りが、朝鮮人による爆弾投てき・放火・投毒だとするデマが広がり、朝鮮人を殺傷する事件が各地で多発した。東日本大震災でも中国人窃盗団による略奪などのデマが拡散。今後は人工知能(AI)で生成したフェイク動画など、新たなリスクにも留意する必要がある。
関東大震災は一方で住民同士の助け合いで多くの命が救われた。95年の阪神・淡路大震災はボランティア元年とされ、その考えは東日本大震災にも引き継がれた。国の国土強靱(きょうじん)化は防災・減災に向けた大前提の施策に過ぎない。情報を正しく入手し、冷静な行動で支え合い、被害を最小限にとどめたい。
(2023/8/31 05:00)
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