(2023/7/27 16:00)
7月26日―28日まで東京ビッグサイト東館で開催された「TECHNO―FRONTIER2023」(主催=日本能率協会)。「モータ技術展」はじめ10の専門展のほか、主催者企画などを通じ、エレクトロニクスとメカトロニクスの最新鋭の要素技術が集結した。 モータ技術展では、ロボットハンド実装やインホイールモーターなど新市場創出に向けた製品発表に注目が集まった。3日間で研究開発や設計などに携わるエンジニアなど延べ3万3940人が来場した。
また8月1日からは、オンライン展を開催(https://www.jma-onlineservice.com/7all/lp_jp_tfif/)。主催者と日刊工業新聞のコラボレーション企画「夏休み企画 リカレント教育」が配信される。
(※以下文章は、7月27日の公開記事です)
海外インターン生がサービスロボ実演
会場内では主催者企画として、メカトロニクス分野の未来を担う人材育成をテーマにしたユニークな発表が行われている。THKが韓国科学技術院(KAIST)に呼びかけ実現したインターンシップ生によるサービスロボットのデモを実演。会議室の机や椅子の配置変更を自動化するという題材が与えられ、学生が開発したプログラムによるロボット達の巧みな動作に多くの来場者が足をとめていた(=写真)。
THKのサービスロボット向け基盤「SEED Solutions」を活用し、会場で披露できるレベルまで完成させた。
参加学生の一人、チェ インハン(CHOI INHAN)さんは「サービスロボットを作る経験を今後のロボット開発に生かしていきたい」と夢を語った。またリー ソウ(LEE SOWOO)さんは、「初めて20分以内で実演できた時はとてもうれしかった。どんなプロジェクトでも仲間と協力することで、完成に結びつくことを学んだ」と振り返った。
同社の佐藤俊範人事企画課長は「初の試みだったが学生の柔軟な発想に任せた。当社の事業のグローバル化が加速する中で、新規分野の研究者を開拓することが必須」とし、海外大学と直接つながるための取り組みを強化していく方針だ。
東京都大田区から12企業の技術発信
東京都大田区は微細加工や切削加工、メッキなど優れた技術力を持つ区内企業12社の共同出展と主催者企画「TECHNO-GARAGE~地方から世界へ~」と題して高度な独自技術を紹介している。
同区は中小企業約4200社が集積し、難加工や試作・設計などモノづくりに欠かせない地域。モノづくりの上流から気軽に相談できるデジタル共同受発注システムなどをアピールしている。
力のある中小企業のブースも見どころ。OUTSENSEが折り工学による設計受託サービスを提案している。友玉園セラミックスは、アルミナセラミック加工品や、アルミナセラミックと金属との接合品をユーザー要求に合わせて、少量から提供できる。大森クローム工業は耐食性と高硬度を両立したメッキ処理技術を訴求している。
ロボットなど新市場開拓
シナノケンシ(長野県上田市)はコーポレートブランド「ASPINA(アスピナ)」の「薄型インホイールモータ=写真」を出品し、注目を集めている。無人搬送車(AGV)や自律移動ロボット(AMR)、電動アシスト台車などに取り付けられる。
減速機と電磁ブレーキを一体化し、内蔵したインホイール構造により、スリムなデザインを実現した。ホイール直径は200ミリメートルで幅128・5ミリメートル。一輪で約250キログラムの重量を支えられ、四輪で使うと約1トンの荷重にも耐える。
同製品は21年に発売し、AGVやAMR向けに納入実績を伸ばしている。同社は「建設業界やロボティクス業界からの引き合いも増え、新規市場創出で顧客の幅が広がっている」と述べる。
沖マイクロ技研(福島県二本松市)は、10月に発売する直径12ミリメートルの超小型高トルクブラシレスDCモーター「Thumbelina(サムベリーナ)=写真」を出品している。
同製品はコアード構造を採用し、小型で高いトルクが得られ、同時にブレーキ性能にも優れる。コアに巻線する独自技術を生かした。トルク定数は1アンペア当たり13ミリ-17ミリニュートンを実現する。また低電流で稼働するため、省エネルギーにも貢献する。
ロボットハンドに直接内蔵できる。マーケティング開発部の山口仁志部長は「ロボットハンドの将来設計を見据え、小型で高いトルク定数を両立するモーターを開発した」とし、「ボールネジを動かすモーターとしても搬送装置の小型化が可能」と話す。
同製品には小型の減速機とエンコーダーもラインアップしている。
モーターの省エネ化トータル支援
「本気で省エネに取り組みたいお客さまのマインドチェンジのタイミングに合わせて提案したい」と力が入るのは、モーターやインバーターなどの一連のソリューションを紹介するABBの担当者。世界各国でカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向けた課題に対応してきた実績から、脱炭素化支援を打ち出している。既存のモーターに取り付けるスマートセンサーでは振動や熱などを計り、モーターの効率を見える化する(=写真)。またインバーター制御と組み合わせて、産業用モーターの国際高効率規格の最高レベル「IE5」クラスのモータ-への置き換えを促している。
ポンプやファンなどモーターを組み込むユーザーに向け省エネ効果を具体的にシミュレーションするWEBコンテンツ「エナジーセーブカリキュレーター」では、顧客の利用環境に合わせて、インバーター駆動によるCO2削減効果のメリットを紹介している。
Piezo Sonic(東京都世田谷区)は自社開発の回転型超音波モーター「ピエゾソニックモータ」の製品群とともに、新製品の位置制御付きドライバー「PSMD―PCCⅡ=写真」を披露した。従来製品の速度制御に加えて位置制御機能も搭載され、超音波モーターの精密コントロールに使用できる。別でコントローラーを取り付けて回路を組む必要がなくなり、ドライバー単独で簡易に制御が実現できる。
多田興平社長は「モーターや応用ロボットまで手がける当社ならではのノウハウを詰め込んだ。位置決めステージや角度の割り出し装置などにターゲットを絞り開発した」と狙いを語る。同社は米ラスベガスで行われたCES2022(家電見本市)に出展し、「Drones &Unmanned Systems」部⾨でイノベーションアワードを受賞するなど開発型ベンチャーだ。
(2023/7/27 16:00)