(2023/8/28 00:00)
モノづくりの現場で、開発の期間短縮や効率化、コスト削減を図るために3次元(3D)プリンターを活用する企業が増えている。3Dプリンターは、3D CADデータがあれば複雑なモノでも作れるので多品種少量生産に最適だ。ただ、国内では、3Dプリンターに対する知見が少ないため導入に踏み切れない企業が多い。導入しても最適な材料や造形方法が分からず、十分活用しきれていないケースもある。こうした課題の解決に向け、3Dプリンター出力サービスを手がけるオリックス・レンテックは、3Dプリンターの造形シミュレーションサービス「3D-FABs」を開始した。3D-FABsがどのようなサービスでどのようなメリットをもたらすのか、同社事業戦略本部事業開発部3Dプリンター事業推進チームの袴田友昭チームリーダー、渡邊正和主任に話を聞いた。
「3Dプリンターを使いこなすにはノウハウが必要だが、ユーザーに十分浸透しているとは言えない」。袴田チームリーダーは、3Dプリンターの活用に関する問題意識をこう説明する。産業用3Dプリンターは、高価なものになると1台数千万から1億円程度に上る。導入しても3Dプリンターの特性を理解し、使いこなすノウハウがなければ、金額に見合うだけの効果を上げることが難しい。そのため、これまで導入を断念してしまう企業も多かったという。
そこで、オリックス・レンテックは3Dプリンターの普及に向けて誰もが気軽に3Dプリンターを学べ、3D設計データの確認作業などを体験できる環境を作ることが必要だと考え、3D-FABsの提供を始めた。同社が保有する3Dプリンターのノウハウを可視化することで、利用者が3Dプリンターを使いこなすためのノウハウを習得できる設計にした。自動車、機械、電機をはじめとする製造業や教育機関での試作・開発などでの活用を想定する。大きな特徴は「造形可否がすぐに判定されるので、モデルの修正ポイントがいつでも、どこでもわかる」、「シミュレーションを通して造形ノウハウが身につく」、「造形物の概算費用がすぐにわかり、結果をアーカイブできる」 といった3点だ。
3D-FABsでは造形したい3D CADデータをサイトにアップロードし、材料やプリンターを選択すると造形シミュレーションができる。造形姿勢を変更するとサポート材が付く場所や量が細かく変化するので、サポート材が少ない造形姿勢を探すことが可能。また、造形可否やうまく造形するためのアドバイスも表示されるので、3Dプリントに必要なノウハウを実践的に学べる。オリックス・レンテックによるとAIが造形時の懸念点とその対応を表示する機能を搭載した3Dプリントの造形シミュレーションサイトは業界初(※オリックス・レンテック調べ)という。袴田チームリーダーは「なぜうまく作れなかったのか、こうするとなぜうまく作れるのかを利用者がサイト上で何度でもトライ・アンド・エラーで確認できるのが大きな売り」と強調する。
造形姿勢を決定後、後工程のオプション設定を選択すると概算費用をすぐに確認できる。部品単体だけでなく、複数の部品の概算費用を一度に試算できるのも特長だ。3Dデータは2週間で自動的に削除されるが、試算結果はデジタルアーカイブとしてサイトに保管されるので、検証作業や比較を効率的に進められる。
3Dプリンターは作りたいモノに合わせて材料と機種を適切に選択することが重要となるため、材料は10種類、プリンターは6種類から選べるようにした。渡邊主任は「効率的にさまざまな材料、プリンターで比較できる点が好評を得ている。マルチベンダーとしての強みを生かして、選択できる材料やプリンターをさらに増やしていきたい」と力を込める。
3D-FABsについて袴田チームリーダーは「まだ3Dプリンターを使ったことがない人や3Dプリンターをよく理解せずに造形委託している企業の担当者に特に使ってほしい。無料なので学校での教育でも活用できる」と期待を込める。提供開始から数ヶ月で利用者を順調に伸ばしており、既に数百人が登録済み。今後、登録者を数万人まで増やす目標だ。
3D-FABsの詳細はこちら
(2023/8/28 00:00)