(2024/11/18 05:00)
石破茂首相と中国の習近平国家主席は15日(現地時間)、ペルーの首都リマで初めて会談した。石破首相が就任早々に習氏と会談したこと自体に大きな意義がある。ただ習氏の関心は目の前の石破首相でなく、トランプ米次期大統領のようだ。米中対立の激化を見据え、日本に多少は接近したように映る。両首脳が「戦略的互恵関係」の推進を確認したのは前進だ。だが日中間の多くの懸案は残されたままで、意思疎通を強化したい。
両首脳は、共通の利益を拡大する「戦略的互恵関係」を推進し、建設的かつ安定的な関係構築を目指すことを確認した。習氏は、日本産水産物の段階的な輸入再開に言及し、日本人男児刺殺事件も「日本人を含む在中国外国人の安全を確保する」と語った。だが、日本産水産物の輸入再開の時期や、男児殺害の動機は明らかにされていない。
習氏は「中日関係は改善と発展に向けた重要な時期にある」と指摘する。そうであれば両国をめぐる多くの課題の払拭に向け、中国も関係改善への具体的な歩みを進めてもらいたい。
中国は不動産不況で内需が停滞し、2024年の成長率目標「5%前後」の達成が危うい。トランプ氏は中国製品に60%の関税を課すことを示唆し、米中の貿易摩擦の再燃が政治的対立をさらに深化させかねない。習氏が日本との関係改善に前向きなのも、トランプ氏を意識した外交と冷静に受け止めたい。
日中には課題が山積する。改正反スパイ法は、日本企業のビジネス環境を脅かす。中国がゼロコロナ政策終了後に再開した短期滞在ビザの免除も、日本は停止されたままだ。安全保障でも沖縄・尖閣諸島を含む東シナ海情勢が憂慮される。中国の日本接近を好機と捉え、意思疎通を強化することで多くの懸念を一つひとつ拭っていきたい。
中国はアジア太平洋の安全保障を脅かす半面、日本にとっては米国に次ぐ貿易相手国でもある。中国とは「対立と協調」の均衡が引き続き大きな課題となる。日本は中国との戦略的互恵関係を模索し、安全保障上のリスク低減につなげてほしい。
(2024/11/18 05:00)