モノづくり・経営の本質突く『老子』 シンデン社長・八木仁氏

(2024/12/13 12:30)

法政大学経営学部のゼミの先生から「出版から30年たった古典を読みなさい」と指導されていた。プラスチック加工技術便覧編集委員会編『プラスチック加工技術便覧』は初版が1960年で、当社の桑名工場(現三重工場)の工場長をしていた93年に購入した。知識を得るのに、とてもためになった一冊だ。

内容が詳しく、プラスチック加工の“原点”が網羅されている。例えばフォームとスポンジの違いなど、類書では記載を見たことがない。ポンチ絵など図解も勉強になる。加工法も応用することで当社の加工ノウハウを生み出せる。発想の元にもなる。

高校の授業で触れてから、老子の本もよく読んでいる。人に話す時は小川環樹訳注『老子』を元にすることが多い。解説本を参考に理解している。これまで事業をしてきて「老子はモノづくりの本」「経営に通じる本」と考えている。

「無用の用」という老子の言葉がある。家を建てるなら、何もない空間があるから家の有用性がある。モノづくりの本当の目的が無用の用に象徴されている。自社が手がけるウレタンフォームは泡の集合体のため、体積からするとほとんど“何もない空間”で、まさに無用の用だ。ウレタンフォームの加工は、自分たちは何もない空間を切っているということをいつも考える。

「無為の状態」は5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の話だ。5Sに成功した会社は、本当に必要なものしか残っていない。無為の状態はこれ以上、捨てるものがないということで、「これさえあれば何でもできる」ことを再発見し「残ったものを残せば絶対に生き残れる」「最後の宝がそこにあった」という状態だと思う。

『老子』は経営者の姿勢が問われる本でもある。最上の為政者についての章を経営に通じる話と捉え、良い意味で、存在感のない経営者は優れていると考えている。従業員が萎縮せず、気楽な気持ちで働ける雰囲気作りはとても大切だ。

(2024/12/13 12:30)

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