(2019/11/21 14:00)
高校を卒業後、モノづくりに携わりたいという思いからシンフォニアテクノロジーに入社した東拓志さん。入社5年目の現在、航空宇宙機器製造部の工作グループに所属している。東さんは小学6年生からレーシングカートに乗っており、今年は、「ROK SHIFTER CUP」というクラスで日本チャンピオンとなって招待されたイタリア大会への出場を果たした。東さんに社会人レーサーとしての活動や会社のバックアップ、職場の理解について話を聞いた。(取材・平川透)
—現在はどのようなお仕事ですか?
「主に航空部品や産業用の電磁クラッチ部品の焼き入れや焼き戻しなどの熱処理を担当しています」
—仕事でやりがいを感じるのはどういった時ですか?
「例えば私が携わった製品が搭載されている航空機を見ると、『自分が作ったんだ』と実感できて、嬉しい気持ちになります」
—高校は普通科を卒業されていますが、どのようにモノづくりについて学ばれたのですか?
「工業の知識はありませんでしたが、入社後半年間の会社の研修で旋盤の使い方や製図など、モノづくりの基礎知識を学びました」
—イタリアの大会に出場した経緯を教えてください。
「イタリア大会の出場は4年前からの目標でした。実は2018年も日本でチャンピオンになっていて参加資格があったのですが、金銭面などの理由から見送りました。
ただ、イタリア大会に出場した方の話を聞くと、イタリアのレースは雰囲気から環境までいろいろなことが日本とは違うようで、私も行きたいと改めて思いました。その想いを励みに今シーズンも頑張り、年間チャンピオンになり招待されました」
—モータースポーツの本場の空気はいかがでしたか?
「イタリアはレースの競技人口が日本よりもずっと多く、熱気があって雰囲気が全然違いました。
日本のレースは出場カートの台数が少なくコース上のバトルは少ないのですが、イタリアでは少しでも隙があればバトルを仕掛けてきます。スタイルの違いに馴染むまでに時間が掛かり、納得のいく成績を残せませんでした」
—社会人レーサーとしては5年目ですが、シンフォニアに就職を決めた理由は。
「レースは基本的には週末にあるので、週末が休みの会社に的を絞って探していました。当社は完全週休二日制というだけではなく、休暇制度が充実していることも魅力の一つでした。さらには色々な働く環境と福利厚生が充実していて、レースを続けるためにはいい会社だなと思い入社試験を受けました。
もちろん、もともと製造系の仕事に就きたいという想いが最初にありました。パソコンに向かうデスクワークよりは、手を動かしモノづくりをしたいと思っていたのです」
—イタリア遠征は10日間と長期間ですが、調整は大変でしたか?
「レースのため5日間連続で有給休暇を取らせていただきました。このような期間の休暇取得が難しい会社も多いと思います。また、私の場合は個人の趣味でもありますので、職場の理解があってこそ、と思っています。さらに、会社からも色々なバックアップを受けました」
—休みを取りやすい環境なのでしょうか?
「入社当時からレースの関係で金曜日に有給を取ることがよくありましたが、上司にも仕事の引き継ぎを頼みやすい環境です。
私だけが特別なのではなく、釣りが趣味の同僚も平日によく休みをとって楽しんでいるようです。従業員のプライベートの充実に理解のある職場だと感じています」
—社会人レーサーとしての今後の目標は。
「またイタリアに行って、もっとよい成績を納めたいです。12月から今シーズンが始まります。今年も日本チャンピオンになって招待されるために、仕事とレースを両立して頑張りたいです」
取材後記
シンフォニアは10年ほど前まで、製造部門は工業高校卒業者だけを採用していたという。多様な人材を採用する方針に切り替え、面接を重視するようになった。高校で普通科や商業科などに進んだものの、製造の仕事に興味がある学生は少なくないはず。間口が広い採用方針はそんな学生たちに“響く”だろう。
(2019/11/21 14:00)