(2023/1/13 12:00)
シンフォニアテクノロジーが飛躍の時を迎えている。世界シェア首位を握る「ロードポート」など半導体関連事業が好調に推移し、継続的な連結売上高1000億円超えが視野に入る。2022年度からは新たな中期経営計画「シンフォニアNEW STAGE(ニューステージ)2024」を始動。
旗振り役を務める平野新一社長に日刊工業新聞社社長の井水治博が成長戦略について聞いた。
半導体関連を成長ドライバーに
社長就任から半年がたちました。まずは経営概況について教えて下さい。
「一定水準の収益力を確保し、財務体質も強化され、とても良い状態でバトンを引き継ぎました。足元はロードポート(半導体製造装置に材料を供給するインターフェース)を中心とする半導体関連のクリーン搬送事業が業績をけん引しています。民間の設備投資や官公庁の投資も一部を除き堅調に推移しており、受注、売上高、営業利益のいずれもここまでは計画以上の進展です。過去最高の業績を目指し、成長軌道を確かなものにしていきます。一方で受注残が積み上がっています。部品調達難や人手不足の中、お客さまに迷惑をかけずに生産できるかが最大の課題です。工場の要員確保を進め、サプライヤーを広げるなど、あらゆる手を尽くして対応します」
4月から中期経営計画「ニューステージ2024」をスタートしました。
「新たなステージで安定した成長を続けていくためにも、企業理念にある『一歩先を行く技術』『地球を大切にする心』『思いやりのある行動』を軸に、社会の持続的な発展に貢献していくことに変わりありません。時代の流れに合わせて実践することが私たちの使命です。将来に向けて技術開発力の強化、新製品の開発、新事業の育成を中期経営計画の柱に据え、脱炭素や環境負荷の軽減、グローバル化の取り組みを一段と進めます。優れた製品を高い生産性を持って世の中に送り出し、同時に組織や企業文化も磨いていきます。特に技術開発力の強化と組織・文化の改革がキーポイントと考えています」
具体的な事業強化の道筋は。
「成長ドライバーの半導体関連事業を一段と強化します。主力の豊橋製作所(愛知県豊橋市)では工場棟を増築します。加えて伊勢製作所(三重県伊勢市)にクリーンルームを増設し、ロードポートの生産を始めました。タイにも新工場を建設します。国内外3拠点で大型投資に踏み切り、2025年度に生産能力を現状比2倍に引き上げます。これにより全社売上高に占める半導体関連事業の比率を3割から4割以上に高める計画です。10年後には事業売上高を倍増したい。北米や欧州、アジアで現地法人や代理店の販売やアフターサービスなどの機能を拡充し、既存のお客さまや新規顧客開拓を進めます。また後工程の自動化ソリューションに加え、微細化や多層化など次世代半導体の開発に貢献していきます。とはいえ自社単独での開発には限界があります。お客さまや大学、研究機関、サプライヤーとの連携をさらに強めたいと考えています」
御社は半導体や航空宇宙、FAシステム、自動車など幅広い業界に製品を供給し、12の事業ユニットを持つコングロマリット企業です。この強みを生かし、どのような新製品や新事業を創出していきますか。
「『モータードライブ』『パワーエレクトロニクス』『システム制御』をコア(中核)技術として、各事業部門によるコラボレーションで新製品・新事業を創出していきます。例えば半導体ウエハー搬送では真空環境での搬送やロボット技術を強化し、対応領域を広げられます。半導体製造装置に使われているダイレクトドライブ(DD)モーターを起点に周辺システムも開発できるでしょう。物流用の搬送ロボットシステムや再生医療装置、水素・アンモニアのハンドリング技術、エネルギーマネジメントなどさまざまな分野で新製品開発を進め、グループ会社を含めたシナジーで最適化を進めたいと考えています」
中期経営計画で掲げる「製品競争力・生産力の強化」「組織・文化の改革」についてはいかがでしょうか。
「製品のデジタル化や生産の自動化を積極的に進めます。これらはカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)につながり、サステナブル(持続可能)な社会の発展にも貢献します。アジャイル型の開発を進め、スピード感を高めます。並行してデジタル人材を育てるなど、組織・文化の改革に取り組みます。人材教育や評価制度を充実させ、目まぐるしく変化する事業環境に柔軟に対応できる組織を目指します。『人材』は最大の財産。加点主義で“出る杭”に寛容なチャレンジできる人・チャレンジする人を支える企業風土を定着させたい。人への投資を行い、個々の力を高めて海外を含め、外部で活躍する人材を増やしていきたいです」
組織改革についてもう少し教えて下さい。
「当社は技術開発を柱とする技術オリエンテッドの会社ですが、どちらかというとニーズではなくシーズから入りがちです。事業ユニットの縦割り色も強い。そこで事業ユニットの相互交流を進めており、例えば半導体関連では豊橋製作所主体の開発部隊を開発本部や伊勢製作所にも広げています。今後、組織を大ぐくり化することも検討していきます。一方、営業サイドでは製品単体売りではなく、システム化を指向していきます。お客さまが何を求めているのか真のニーズを捉え、役に立つシステムを提案する。これにはSE(システムエンジニア)力を向上しなければなりません。提案型営業を強化するため、営業と開発が組んで、11月に社内コンテストを開く予定です。お客さまも気づいていないような『一歩先を行く技術』を開発、提案し、期待に応えていきたいと考えています」
サステナブルで安定と希望ある会社に
最後に今後の展望をお願いします。
「『サステナブルで安定した希望のある会社』を目指します。従業員を含め、ステークホルダーに夢を持って頂ける企業にしたいですね。前中期経営計画の『シンフォニアABC2020』で一定水準の収益性と財務体質を確立し、成長軌道に乗れましたが、これを確固たるものにするには、現中期経営計画をやり遂げるだけでなく、将来像を描き、手を打つことが重要だと考えています。現在、全社で10年後の姿を策定し、そこからバックキャストして5年後などのマイルストーンを設けて進めていくことを計画しています」
(2023/1/13 12:00)