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(2017/8/30)
カテゴリ:調査レポート
リリース発行企業:一般社団法人防災ガール
~1位 神奈川県葉山町、2位 千葉県安房郡鋸南町、3位 宮崎県日向市~
日本発の津波防災の合図である「オレンジフラッグ」を普及啓発するプロジェクト「#beORANGE(URL:http://beorange.jp/)」を企画・運営する一般社団法人防災ガール(代表理事:田中美咲 以下、防災ガール)は、南海トラフ地震で被害が予想されている全国14都道府県の沿岸部139市町村を対象に独自調査を実施し、「津波防災のソフト面対策自治体ランキング2017」を作成しました。
本調査では、南海トラフ地震で被災が想定されている全国14県の沿岸部139市町村の地域防災計画と津波避難計画をもとに、<インターネット上で閲覧・ダウンロードが可能か>といった利便性や、<具体的な施策への言及がなされているか>といった実効性などを調査(1次審査)。さらに、その内の上位10自治体に対して、住民を巻き込んだ施策が講じられているかという、住民参加の視点に基づく採点を実施し(2次審査)、合計24の指標を用いて総合的に分析しました。
世界有数の災害大国である日本だからこそ、来る南海トラフ地震に備え、また、世界の模範となるような津波防災のあり方を、常に模索し続けることが必要です。
今回このようなランキングを作成することで、行政と私たちを繋ぐ津波防災のソフト面対策の現状を把握し、優れた施策を講じている自治体を共有し、日本全体として成長していくことを期待します。
■1次審査 各自治体得点分布
※不明はHP等に地域防災計画の掲載なしもしくは検索できず
■1次審査 トップ45市町村一覧
※同順位は名前順に表示
■上位ランキング自治体総合結果
■津波防災”ソフト面対策”の重要性について
日本の津波防災の課題
東日本大震災以降、日本全国で「防災」への注目度は高まり、特に津波防災については、東北地方の太平洋沿岸を襲った津波によって多くの尊い人命が失われたことを受け、「津波対策の推進に関する法律」が制定されるなどその重要性が叫ばれています。ハード面とソフト面の両面からの津波防災対策の整備が推進されているものの、特に住民参画やハザードマップの利活用などソフト面での対策については手法が多岐にわたっており、しかもその成果が測りづらいため、ハード面の対策に比べて計画や実行の優先順位を上げにくいことが多くの自治体で課題となっています。
極めて大きな被害が想定されている南海トラフ地震をはじめ、多くの命を奪いかねない津波という危機が常にすぐそばにあるなかで、地域住民も国や各自治体の施策だけに頼るのではなく、防災に対して主体的に参加し優れた取り組みに賛同していくことが求められています。官民がそれぞれの強みを活かしあい、協力していく体制の必要性はますます高まっています。
これまでの津波防災を変える「オレンジフラッグ」
一般社団法人防災ガールは、日本財団との共催で、2016年から津波防災の新しい合図「オレンジフラッグ」を普及啓発するプロジェクト#beORANGE(ハッシュビーオレンジ)を進めています。
「オレンジフラッグ」は、津波の危険性がある際に海辺や沖に出ている人に避難を促します。津波避難は1分1秒を争いますが、海辺ではサイレンの音が聞こえにくく、また危険を認知しても避難先がわからず、迅速に行動するのが難しいという課題があります。そこで避難を加速化させるためのオレンジフラッグの普及が望まれています。
#beORANGEでは、昨年度全国73市町村、165本のオレンジフラッグを設置。今年は宮崎県を中心にオレンジフラッグの設置/普及/啓発を実施しています。
<オレンジフラッグの意味>
陸でオレンジフラッグを振る人が見えたら「津波が来たぞ、早く上がれ」
高台や津波避難ビルにオレンジフラッグが掲げられているのが見えたら「ここが安全だ早く登れ」
■採点基準について
◉1次審査の採点基準及び配点
基礎点 計30点(部分点なし)
1.防災計画が作成済みである 15点
2.防災計画の直近のアップデートが平成24年4月以降である 5点
3.防災計画がインターネット上で閲覧・ダウンロード可能である 10点
加算点 計70点
1.検索容易性(計10点)
・ファイルが分割して掲載されている(5点・部分点なし)
・目次が分割して掲載されている(5点・部分点なし)
2.ソフト面対策の充実度(計35点)
・津波避難ビル・タワーへの避難の実効性を担保する具体的な施策への言及がなされている 5点
・コミュニティ形成に関する施策への言及がなされている(5点・部分点なし)
*施策の具体的な内容評価までは踏み込まず、「ワークショップ実施」「行政アプリ活用」「定期勉強会」などのキーワードの有無を基準に採点。
・ソフト面対策の普及啓発の実効性に関して、具体的な施策への言及がなされている(10点・部分点なし)
・その他、ソフト面対策の具体的な施策への言及がなされている(1施策3点で15点満点)
*住民の関わり方(一方向か双方向であるか、学びを伴うものであるか等)が類似の施策はまとめて1施 策としてカウント。
3.観光客と外国人への対応想定の有無(計15点)
・対応の必要性への言及がなされている(5点・部分点なし)
・具体的な施策への言及がなされている(1施策2点で10点満点)
4.地域に根ざした津波避難計画の有無(計10点)
・津波避難計画がインターネット上で閲覧・ダウンロード可能である(5点・部分点なし)
・地形や文化的背景、地域柄などを踏まえた計画が策定されている(2点・部分点なし)
・その他、計画の実効性を担保する具体的な施策への言及がなされている(1施策1点で3点満点)
◉2次審査の採点基準と配点
アメリカの社会学者シェリー・アースタインによる「住民参加の階段」(Step of Citizen Participation)を参考に、各段階につき以下のとおり配点しました。採点においては、防災計画内のソフト面対策の具体的施策ごとに該当する段階を評価し、1施策ごとに点数を積算していく方式を採用しました。
また、最終的なランキングを決する総合点は、(1次審査の点数×1/2+2次審査の点数)により算出しました。
1.聞く・知る(3点)
例:防災パンフレット作成配布、ハザード マップの配布、インターネット、ラジ オ、テレビ、新聞、ケーブルテレビ、防 災行政無線、広報車、アプリ等
2.考える(5点)
例:講習会、シンポジウム、研修会、勉強 会、映画、セミナー、津波高表示、畜光 石等
3.要求する(8点)
例:市民懇談会、相談窓口等
4.加わる(12点)
例:防災訓練等
5.身につける(15点)
例:ワークショップ等
6.住民主導(20点)
例:オレンジフラッグ等
■監修後記
【採点方法】
対象となる資料は、139自治体が発表している地域防災計画および津波避難計画のみとしました。
1次審査は、津波防災のソフト面対策につき、オープン化・多重化が図られているか否かを独自の採点基準により評価。2次審査は、1次審査の採点結果上位10自治体のみを対象に、ソフト面対策における住民の関わり方を、シェリー・アーンスタイン(アメリカの社会学者)による「住民参加の階段」(Step of Citizen Participation)を参考に、6段階評価で採点しました。
【調査・採点の実施方針】
今回の調査及び採点は、学術的な目的は伴っておらず、また、各自治体の対策不備を強調する趣旨でもありませんので、限定的かつ簡易なものであることをご理解の上、ご了承ください。なお、全対象自治体分の採点データは、みなさまに更なる検証や分析をしていただけるよう、追って公開することを予定しております。
【そのほか留意点】
・対象自治体は、南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域指定市町村に該当している1都13県139市町村(以下『対象自治体』といいます。)としました。
参照:http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/pdf/nankaitrough_shichouson.pdf
・採点の対象となる事項は、公平を期すため、災害対策基本法(第40条)及び津波対策の推進に関する法律(第9条)を踏まえ、防災計画等の公開状況及びソフト面対策に関連する部分のみとしました(ただし、インターネット上、または郵送手続きにより、調査期間当時に閲覧が可能だったものに限ります。)
・以上の採点基準等の策定は、防災ガール監事である小野田峻弁護士が独自にこれを定め、各自治体の採点作業については、#beORANGEスタッフが行いました。
監修:小野田高砂法律事務所 代表弁護士 小野田峻
東日本大震災発生時に岩手で被災したことをきっかけとして、弁護士登録後は、通常業務の傍ら、東京弁護士会法友会内有志の津波被災地訪問企画を立案し、継続的に実施。さらに2016年には、防災にとどまらず、広く社会起業家を支援することに特化したシェアオフィス併設の法律事務所「小野田高砂 法律事務所」を開設。
■運営者情報
一般社団法人防災ガール URL:http://info.bosai-girl.com/
2013年3月設立、2015年3月11日に法人化。「防災があたりまえの世の中に」を目指すべく、20代~30代を中心に構成されたソーシャルスタートアップ。常に今ある「あたりまえ」を疑いながら防災や生きることについて考え、商品開発やイベントプロデュースを通して、フェーズに合わせた新しい防災の概念をさまざまな形で提起し続けます。
■共催
日本財団「 海と日本プロジェクト」URL:http://uminohi.jp/
日本財団「海と日本プロジェクト」とは、2015年に「海の日」20回目を記念し、日本財団の主導で推進しているプロジェクトです。次世代を担う子どもたちを中心として多くの方々に「海の日」の意義について認識を深めてもらうとともに、海への好奇心を持ってもらい、行動を起こすムーブメントを作り出すことを目指しています。
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