[ オピニオン ]
(2016/1/28 05:00)
日銀が28、29日に開く金融政策決定会合で追加緩和を実施するのではないかとの観測が広がっている。年初来の原油価格下落により物価上昇率2%の目標達成が一段と難しくなったことに加え、円高・株安によって景気の下振れが懸念されるためだ。日銀は追加緩和の効果を慎重に見極めて、仮に実施する場合はその狙いを十分に説明することが求められる。
原油価格の下落は今年に入っても歯止めがかからず、1バレル=30ドルを下回る安値を記録した。これに円高が追い打ちをかけた結果、円建ての原油価格は前年同期比で約40%も下落しているのが実情。このため日銀が29日に公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」は1・4%としてきた従来の物価上昇率の見通しを下方修正するものとみられる。また「16年度後半ごろ」としてきた物価上昇率2%の達成時期についても、先延ばしが予想される。
さらに、世界的な株安の連鎖に伴って日経平均株価は軟調に推移しており、1万7000円割れの安値圏定着が危惧される。株安は家計と企業の心理を冷やし、景気の足を引っ張るため、政府・日銀は警戒感を強めている。黒田東彦総裁が業界団体の新年会や衆院委員会で「必要とあれば、躊躇(ちゅうちょ)なく調整を行う」「できることは何でもやる」と発言してきたことも追加緩和観測に拍車をかけている。
追加緩和を実施する場合、長期国債の買い入れを現在の年80兆円から最大で年100兆円程度まで増やすことや上場投資信託(ETF)の購入枠拡大、地方債の新規購入などが考えられる。しかし、こうした追加緩和が円高・株安の流れを変えることができるかどうかは未知数。世界的な株安や原油安が加速すると、追加緩和が帳消しになるおそれもある。
昨年の日銀は、10月末に物価上昇率の見通しを下方修正しながら追加緩和を見送ったり、12月には補完措置を小出しにするなど言行不一致が目立った。今回もし追加緩和に踏み切るのであれば、その考え方や効果を十分に説明する必要があるだろう。さもないと、日銀は信頼を失いかねない。
(2016/1/28 05:00)