[ オピニオン ]
(2016/1/29 05:00)
安倍晋三首相にとって最大の危機である。一貫して政権の中核を担ってきた甘利明経済再生担当相が、金銭授受の疑惑を認める形で辞任した。しかし、この問題によって今国会における環太平洋連携協定(TPP)の議論や政府の経済運営に遅滞が生じることは許されない。首相は閣僚交代の事態が大きな国益を損なうことにならないよう、後任に選んだ自民党元幹事長の石原伸晃氏を中心に最大限の努力を傾けてもらいたい。
安倍政権の中核が、麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉内閣官房長官と甘利氏の3閣僚だというのは衆目の一致するところだ。
このうち経済問題を担当した甘利氏は、困難を極めたTPPの交渉をまとめあげた功績が大きい。また日本経済の最大の課題であるデフレ脱却についても、あとひと息のところまで来ている。長く産業政策を専門としてきた甘利氏に対しては産業界の信頼も厚かった。日本経済再生の道半ばでの交代を、残念に思う産業人は少なくないはずだ。
金銭授受に対する甘利氏の責任が閣僚辞任で果たされたかどうか、議論もあるだろう。しかし産業界として気がかりなのは、TPPと経済運営の今後である。
TPPは経済規模の大きな日米が批准しなければ発効しない。その第一歩となる今国会での承認が得られなければ、それだけ国益が損なわれる。交渉を詳細に知る甘利氏の答弁を欠くことは政府にとって大きな痛手だ。野党の中に、TPP問題をいたずらに政局に結びつけようとする動きが出てくることを恐れる。
政府の経済運営は、より大きな困難に直面している。金融政策と財政出動による景気の下支え効果には限界が見えてきた。成長戦略を実りあるものにし、一億総活躍などの諸施策を軌道に乗せなければ経済政策「アベノミクス」は失速しかねない。内閣が一丸となって、日本経済の再生を成し遂げてもらいたい。
産業界は安定政権を望んでいる。首相は早期に体制を立て直し、経済最優先の政治を継続してもらいたい。
(2016/1/29 05:00)
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