[ オピニオン ]

社説/文化庁、移転固まる−京都の都市力向上に結びつけたい

(2016/2/29 05:00)

政府は文化庁を京都市へ移転する方針を固めた。年度内にも正式決定する。霞が関の一部の抵抗を押し切っての決断を評価したい。

政府機関の地方移転は、安倍晋三首相が打ち出した地方創生の一環。多くの候補がリストに掲載されたが、具体化は難航している。石破茂地方創生担当相は「民間に本社機能の一部移転をお願いしている。その政府が『何も動きません』では説得力がない」と話している。”ゼロ回答“にしないために、最も条件が整っていた文化庁を選んだ形だろう。

文化庁の移転は京都の悲願だ。門川大作市長は「(2002年に京都大学名誉教授の)河合隼雄先生(故人)が長官に就任した時に強く念じ、まず長官分室を京都に開設した」と振り返る。今回も真っ先に誘致の意欲を示した。京都府の山田啓二知事は正式決定に向けて「引き続き全力を挙げたい。府、市、経済界などで力を合わせたい」と力を込める。

古都・京都は世界遺産の施設17カ所を有する世界屈指の観光都市だ。さらに茶や華道などの伝統文化、西陣織などの伝統産業も息づく。関西圏を含めれば国宝の54・8%、重要文化財の44・6%が立地する。移転先として、さまざまな面で地の利がある。

今後は具体的な移転先や費用負担などの実務作業が控える。ただ政府機関移転は地方創生の手段にすぎない。中央省庁とはいえ、200人余の一部局の移転だけでは東京一極集中の是正にはつながらない。これを、どこまで京都の都市力の向上に結びつけられるかが今後の課題となる。

訪日外国人は15年に1974万人に急増し、国は目標を3000万人に引き上げた。しかし追い風だった為替レートは足元で円高に基調に転じ、いわゆる”爆買い“にも変調が見られる。この先も外国人観光客を魅了し続けられるのか。京都には世界的な観光都市だけでなく、日本文化の発信力を強めることが求められる。

政府機関だけで地方経済活性化ができるわけではない。移転の成否にかかわらず、地方創生に向けた挑戦を政府にお願いしたい。

(2016/2/29 05:00)

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