[ オピニオン ]
(2016/1/27 05:00)
2015年1―12月の輸出船契約実績(一般鋼船)は前年比7%増の約2222万総トンと、2008年のリーマン・ショック以降で最高となった。2000万総トンの大台を取り戻したのは8年ぶり。ただ、これは窒素酸化物(NOX)3次規制対応など追加コストを強いる国際ルール適用前の駆け込み需要によるところが大きい。反動減は確実で、16年の新造船市場の展望は明るくない。
中国をはじめ新興国経済の低迷で世界貿易量の伸びが鈍化し、海運市況の不透明感は強い。ばら積み運搬船は船腹過剰感や低運賃で市況回復からほど遠い。コンテナ船は大量輸送に適した超大型船の完工が増え、市況回復に悪影響を及ぼす可能性が残る。一方、原油価格下落で活況を呈するタンカーの受注が増えているが、これも将来の市況に大きな圧力をもたらす公算が大きい。
世界の船腹需要は年5000万―6000万総トン。これに対して新造船の供給能力は約2倍ある。造船所の建造量は1億総トンを超えたピークよりも減ったが、16年は15年に比べて1000万総トン増の9000万総トン規模に膨らむとみられる。造船業界は「船腹過剰になれば、海運市況の回復がさらに遅れる」(村山滋日本造船工業会会長)と警戒感を強めている。
業界にとって、もう一つの懸念材料は韓国造船大手との受注競争激化だ。現代重工業、大宇造船海洋、サムスン重工業の”造船ビッグスリー“は、資源掘削船など海洋プラント工事の生産混乱で巨額の損失を被った。ウォン高傾向は韓国勢の受注の障害だが、造船所の稼働を維持するために安価な商船受注を積極化せざるを得ず、船価は下押し圧力にさらされる。
わが国の造船業は近年の円安に助けられ、足元で約3年分の手持ち工事量を抱えている。国際指標である英IHS統計によれば、15年1―9月の新造船受注は日本1815万総トン、韓国2096万総トン、中国1740万総トンと拮抗(きっこう)している。しかし現状に安住することなく合理化を含む新機軸を打ち出さなければ、遠からず苦境に追い込まれるだろう。
(2016/1/27 05:00)
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