[ オピニオン ]
(2016/2/1 05:00)
日銀は年初来の株式・為替市場の不安定化で、企業と家計のマインドに悪影響が出るリスクを排除するため、新たな追加金融緩和策として「マイナス金利」の導入を決めた。2%の物価上昇率を早期に達成する強い意欲を示したことは評価できるが、効果のほどは未知数であり、金融機関の収益を圧迫し、金融仲介機能を損なう副作用があることも否めない。
マイナス金利は民間金融機関が日銀の当座預金口座に預ける資金から手数料を取るもの。すでに預けている当座預金の金利は0・1%を据え置き、銀行が2月16日以降、新たに積み増す分からマイナス0・1%の金利を適用する。黒田東彦総裁は「従来の量的質的金融緩和にマイナス金利を加えた3方向から追加緩和が可能なスキームとした」と胸を張った。
マイナス金利は銀行の貸し出し増加を後押しする効果もある。だが、日銀は企業の資金需要が弱い現状に鑑み、マイナス金利と長期国債の大量買い入れで金利全般に強い下押し圧力をかけることにより、投資と消費を刺激し、経済を活性化して物価上昇に弾みがつくことを期待している。
同時に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で日銀は、2016年度後半ごろとしてきた物価上昇率2%の達成時期を17年度前半ごろに先延ばしした。これは原油価格の下落が主因で今後も原油価格の安値推移を見通していることから、さらなる先延ばしがあることを予感させる。
黒田総裁は「必要とあれば、躊躇(ちゅうちょ)なく調整を行う。3方向とも拡張することが可能だ」とさらに金融緩和を強化していく姿勢をみせている。13年4月に異次元緩和をスタート、14年10月に追加緩和を実施したものの、物価目標は蜃気楼(しんきろう)のように遠のくばかり。マイナス金利の導入で日銀の金融緩和政策はますます深みにはまっていくことが危惧される。
物価上昇率2%の達成は金融政策だけでできるものではない。企業が投資に慎重なのは資金不足が理由ではない。企業を前向きにさせるのは金融政策よりむしろ政府の成長戦略ではないだろうか。
(2016/2/1 05:00)
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