[ オピニオン ]
(2016/3/23 05:00)
2016年公示地価(1月1日時点)が、全国平均で8年ぶりに上昇へ転じた。安倍晋三政権が目指すデフレ脱却に向けて、景気のバロメーターのひとつである地価が改善したことは明るいニュースだ。円高株安基調など足元の経済情勢は予断を許さないが、土地の有効利用を成熟社会を支える経済基盤としたい。
公示地価は、土地を利用して得られる便益に基づいて算定する「正常な価格」。用途区分ごとに全国で標準的な土地を2万3000カ所余り選定し、不動産鑑定士が厳格に評価している。
16年は住宅地が前年比マイナス0・2%とわずかに下落したものの、商業地が同プラス0・9%と上昇。平均は同プラス0・1%となった。住宅地のマイナス幅は6年連続縮小。東京、大阪、名古屋の3大都市圏では住宅地、商業地とも3年連続で上昇し、特に商業地は同プラス2・9%と上昇基調を強めている。地方圏は住宅地、商業地とも下落が続くが、平均で同マイナス0・7%と下げ止まりつつある。
住宅地は安倍政権の経済政策「アベノミクス」による住宅ローン減税の拡充や給付金が需要を下支えした。また商業地は企業業績の回復とともに、外国人旅行者の増加でオフィス、店舗・ホテル需要が堅調だ。
国際金融市場の混乱を招いた中国経済の減速が企業業績の伸びを鈍らせ、大手企業の賃上げは前年を下回る水準にとどまるなど、景気回復のマイナス要因が目立っている。こうした状況だからこそ、社会生活の基盤である土地を見つめ直すことが重要だ。
特に注目したいのは「地方中枢都市」と位置づけられる札幌、仙台、広島、福岡の4市。住宅地、商業地とも3大都市圏を上回る上昇となった。鉄道の延伸や新駅設置、市街地の再開発など、それぞれの基盤整備が求心力となって人口増加が続く。他にも熊本市は中心駅周辺の再開発に合わせて企業誘致に取り組み、前年の住宅地に続き商業地も上昇に転じた。
土地の活用は自治体にも可能な努力である。自発的な取り組みを、地方創生につなげたい。
(2016/3/23 05:00)