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(2016/5/9 05:00)
熊本地震から3週間が過ぎた。被災企業の多くが素早い復旧で事業を軌道に乗せた一方、いまだ途上の企業もある。震災直後から片付けや修繕など操業再開に全力を挙げた各社は、それぞれ新たな課題を乗り越えようとしている。熊本県工業連合会(工連)の足立國功会長に復旧の現状を、また熊本、大分両県の企業経営者に今後の課題や対応を聞いた。(熊本支局長・勝谷聡、大分支局長・広木竜彦)
―産業界の復旧の現状は。
「工連の会員各社に対して被災状況をメールなどで確認中だ。被災の状況もさまざまだ。しかし、どの企業も復旧、製造再開に向けて頑張っている。経営者も社員と家族のことを心配し、気遣いをしている。なによりもめげていない。シュンとなんかしていない。企業同士で役立つことはないかと連携しようとする動きも出てきた」
―復旧・復興に向けた課題は。
「国や行政に対して熊本県産業界の役に立つ行動をとりたい。そのためにも各企業の抱える課題や実態など情報をつかむ必要がある。熊本地震は震度7クラスの大地震が2度起きていまだ余震が続いている。大きな揺れがまた来るのではないかと不安な気持ちもぬぐえない。余震の心配がなくなり、トラウマが消え去れば復旧、復興のピッチが上がると見ている」
―業種や地場企業、進出企業などで進展に違いがありますか。
「IT関連企業は顧客次第のところもあるが、パソコン、サーバー、そして人がいれば立ち上がりは早いだろう。一方、製造業は復旧に時間がかかる。工場が倒壊し、クレーン、重機が倒れ、製造設備も壊れた。しかし被災企業の中には他社のスペースを借りていち早く製造を再開した企業もある。稼働までの間、働き手を一時預かろうとする動きもある」
―工連への期待がこれまで以上に高まりそうです。
「これまでも進出企業と地場企業の橋渡しを担ってきた。両者の結びつきを一層強固にしたい。熊本の産業界はこの震災を乗り越えることができれば強靱(きょうじん)なものとなる。そのためにはリーマン・ショック以降、求心力を高めた工連の絆を今後もより強めていく必要がある」
機材・人的支援取り組む−熊本・大分の経営者
◆段取り決め補修
熊防メタル(熊本市東区、メッキ加工)・前田博明社長
課題は交通網の回復だ。物流が回復すれば復旧に弾みがつく。顧客に迷惑はかけられない。効率の良い復旧のために、メッキ槽の補修や排水処理など段取りを決めて取り組んでいる。社内に修理業者の宿泊施設を造った。大型連休明けにはかなりの復旧が見込まれる。
◆復旧・炊き出し動く
重光産業(同東区、外食チェーン)・重光悦枝副社長
全店舗の復旧と営業の再開が課題。一日も早いライフラインの完全な復旧を望む。店舗が入居するテナントビルの安全確保も必要だ。本社製造ラインも復旧を急いでいる。避難所で温かいラーメンの炊き出しを続けている。少しでも明るい気分になってもらいたい。
◆仮設機材で再開
ナカヤマ精密(大阪市淀川区、超精密部品製造)・中山愼一社長
熊本県西原村と菊陽町の二つの製造拠点が被災した。この3週間で製造は8―9割まで復旧した。西原村の工場は建物内外と天井が被災した。天井と機械設備の間に仮設機材を組んで、同時進行で復旧を進めている。行政にはライフラインや住宅確保をお願いしたい。
◆被災企業情報収集
吉野電子工業(熊本県南関町、電子部品製造)・古賀博文社長
金型業界では、県外や諸外国も含めた協力支援体制が生まれている。熊本県工業連合会国際部の提携先である台湾や、韓国、中国などから支援の要請がある。これに応えるため、半導体装置やプレス関連の顧客など、被災企業の情報収集に取り組んでいる。
◆同業の復旧支援
池永セメント工業所(大分市、コンクリート製品製造)・池永征司社長
被災した熊本県の同業者に復旧支援機材として特殊フォークリフトなどを届けた。製品置き場には側溝などの製品が散乱している。コンクリート製品は社会基盤の復旧・復興にとって必要不可欠な製品のため、今後も支援は惜しまない。
◆調達先の支援検討
デンケン(大分県由布市、検査装置・医療機器製造)・石井源太社長
大分県内の工場は人的、物的被害はなかった。ただ部材調達している熊本県の企業が被災した。復旧・復興が長引けば影響は避けられないため支援策を検討している。国や自治体に対してはインフラを含めて、地場企業の支援をお願いしたい。
◆ネット発注で支援
ターボブレード(大分市、流体機械設計・解析)・林正基社長
熊本県内に取引先はないが、3次元の機械設計を得意とする企業はある。今後、飛行ロボット(ドローン)やロボット関連の受託設計が増えてくる。被災した企業の一日も早い復旧を願って、当社の受託件数に応じてインターネットを利用した発注依頼を検討したい。
◆吸引機器不足懸念
徳器技研工業(大分県宇佐市、医療機器製造)・徳永修一社長
病院施設や在宅で気管内のたん吸引が必要な患者の被災状況を危惧している。東日本大震災では電源の確保が難しかったため、機器のバッテリーや電源不要な足踏み式が必要とされた。国や自治体には患者の状況に応じた、吸引関連機器の支援を求めたい。
(2016/5/9 05:00)
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