[ オピニオン ]
(2016/5/23 05:00)
政府の2016年版「ものづくり白書」は、昨年に続いてIoT(モノのインターネット)などを活用した“第4次産業革命”の分析に力を入れた。ただ残念ながら、日本企業の取り組みが着実に前進したという結果にはならなかった。今後は、より問題点を絞り込むとともに中小企業にも分かりやすい視点でモデルを示すことが必要になるだろう。
白書では、IoTなどがどんな分野で活用されているかを細かく調べた。最も利用率が高いのは設計に関連した分野で、次いで生産工程の「見える化」や各種の所要時間削減、取引先を含めたトレーサビリティー(追跡)管理、発注情報の分析などに利用している企業が多い。
一方でITを「予知保全」などの新たな価値創出に活用しているという割合は、極端に低かった。生産工程の効率化を得意としてきた日本企業が、新たな分野の技術革新に踏み込めていないとしたら問題だ。
白書では、ビジネスモデルを変革して新たな「価値づくり」に挑む企業を「ものづくり+(プラス)企業」と名付け、複数の事例を挙げつつメーカーの目指すべき姿だと期待を示した。ただ、こうした経営革新の内容としては新規事業分野の開拓、グローバル化、人材流動などを例示するにとどまった。
第4次産業革命に挑む企業が求めているのは、どんな分野にIT投資を振り向ければ価値を生み出せるかという情報だ。また低コストで効果の高いITシステムを構築するためには、電子的にやりとりされる情報が標準化・汎用化されていることが望ましい。
例えば故障情報や顧客クレームの書式や要件がある程度、統一されていれば、企業は予知保全のシステム化に取り組みやすくなる。そうした意味で政府にも期待される役割がある。
この他に白書では、生産の国内回帰に対する労働供給の制約や、女性の活躍に関する意識の変化など興味ある分析をしている。これらをモノづくり企業の進むべき道筋を示す政策に活用してもらいたい。
(2016/5/23 05:00)
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