[ オピニオン ]
(2016/5/20 05:00)
主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が20、21の両日、仙台市で開かれる。26日に開幕する主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の前哨戦で、世界経済の減速懸念を緩和し、為替相場が安定に向かう契機となるかが焦点になる。日本企業の収益悪化に歯止めをかけ、回復力の弱い日本の景気浮揚につながる会議としたい。
今期5期ぶりの営業減益を予想するトヨタ自動車の豊田章男社長は「大きく潮目が変わった」と、急激な円高による経営環境の悪化を懸念する。G7仙台会議とサミットでは、過度な為替変動に懸念を示しつつも“通貨安競走”につながる為替介入にはクギを刺す見通し。G7各国は金融、財政、構造改革の政策総動員により、世界経済をけん引することでは合意できそうだが、為替相場をめぐる各国の見解には温度差がある。
中でも米国は、足元の為替相場は「秩序が保たれている」とし、日本を為替政策の監視対象に指定した。大統領選も絡み、輸出競争力の強化を狙った日本の為替介入をけん制したものとみられる。
1ドル=100円を割るような急激な円高でない限り、日本政府や日銀の“口先介入”が実際の介入に転じる可能性は低いだろう。加えて米国経済の若干の陰り、さらに新興国経済への配慮から米国の利上げペースは予想より鈍化する見通し。日銀が6―7月に追加の金融緩和策を講じると予測するエコノミストは少なくないが、先のマイナス金利導入の例をみても大きな円安誘導効果は望めない。
行き過ぎた円高を是正し、為替相場を安定させるには市場の混乱要因を取り除くしかない。新興国経済の軟着陸、原油の需給改善、さらに中国に加えてG7各国も構造改革を進める必要がある。先進国に共通する高齢化に伴う労働人口減、環境問題、生産性向上などの諸問題に取り組み、内需を拡大することが市場の安定につながる。
G7は財政出動のような“対症療法”にとどまらず、“急がば回れ”の視点で構造改革にも十分に目配りしてもらいたい。
(2016/5/20 05:00)