[ オピニオン ]
(2016/5/24 05:00)
司法試験改革で、本来ならバイパスに位置付けられたはずの予備試験の人気が衰えない。専門職大学院である法科大学院の抱える課題が、こうした矛盾を生み出した。両者のあり方を根本から見直さない限り、異常の常態化が続くだろう。
2006年に始まった新たな司法試験では、法科大学院の修了が受験資格の原則となった。これに備える形で、国内に法科大学院が相次いで誕生した。一方、11年に旧司法試験が終了したのに伴い、新制度の受験資格を得られる予備試験が始まった。法科大学院を出なかった人にも法曹界への道を開くバイパスの役割が期待された。
ところが、これが本来の役割とまったく異なる事態を生んでいる。予備試験は大学在学中でも受験でき、合格すれば法科大学院に進む必要がなくなる。加えて、短期間で難関を突破した優秀な学生と認められ、司法修習後の就職でも有利になるとすら言われる。バイパスどころか法曹界への“王道”になっているのが実情だ。
このような事態を生んだ背景には、法科大学院の抱える課題がある。受験生にすれば、修了まで2―3年かかる上に学費が高い。やっと修了しても司法試験のハードルが下がるわけではない。可能なら最短コースである予備試験を突破したいと願うのは当然の心理だろう。
司法試験を目指すための予備校では、まずは予備試験を勧める指導が一般的だという。現状を放置すれば、法科大学院は予備試験の“滑り止め”に甘んじるほかない。
予備試験の合格者枠は小さいが、学生が殺到すればいずれ枠の拡大を求める声が高まろう。しかし、それでは何のために旧司法試験を廃止し、法科大学院を設けたのか分からない。
最近、法科大学院の募集停止が相次ぎ、実績を出せない大学は淘汰(とうた)され始めている。一連の司法試験改革はさまざまな意味で見通しが甘く、大学と受験生の双方に多大な迷惑をかけた。当事者は猛省するとともに、早期に異常な事態を正すための道を探るべきだ。
(2016/5/24 05:00)