[ 金融・商況 ]
(2016/6/17 05:00)
(ブルームバーグ)英国の欧州連合(EU)残留・離脱を決める国民投票が近づいてきた。ロンドンの不動産価格からポンド相場まで、幅広い資産に影響が出ているが、ロンドンの金融街シティーにとって、いわゆる「Brexit」、つまり離脱はどんな意味を持つのだろうか。
ロンドンは全世界の外国為替取引の41%、店頭デリバティブ(金融派生商品)取引で49%の市場シェアを持つ、押しも押されぬグローバルリーダーだ。離脱反対派は、EU離脱によって不透明な時期が続き、ロンドンの影響力とシェアが一貫して低下することを恐れている。
現制度の下では、英国で承認されている金融機関は英当局から「パスポート」を取得することによって欧州経済領域(EEA)内の他のいずれの国でも自由に営業できる。JPモルガン・チェースやクレディ・スイス・グループ、野村ホールディングスなどEU外の銀行にとって、これはロンドンに拠点を持つことの大きな魅力だ。この恩典がなくなる可能性を視野に、各社は業務への支障が最も小さい方法を検討している。
英国はこの制度か類似のものを継続するよう交渉するだろうが、離脱に追随する国が出ては困るEU側は拒否するかもしれない。パスポートがなくなれば英国から他のEU加盟国への金融サービスの輸出は半減するとの試算が、ファンドマネジャーのニール・ウッドフォード氏が依頼した調査で示された。フランクフルトとパリ、ダブリンは受け皿になろうと手ぐすねを引いているのだ。
欧州の他の都市にもオフィスを持つ大手銀にとってはロンドンからルクセンブルクかダブリンに移るのはそれほどたいへんなことではないかもしれない。それでもEU外の銀行は新しい欧州本部を置く国の監督当局を納得させるためには、十分な業務を移さなければならない。いずれにしても金がかかる。
各銀行はどう考えているのだろうか。
* JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者は今月、離脱なら英国内の従業員1万6000人の4分の1を欧州大陸に移さなければならないだろうと述べた。
* HSBCホールディングスは本部を英国内に維持するとしても、ロンドンの投資銀行部門従業員5000人のうち1000人をパリに移す必要があるかもしれないとしている。
*ドイツ銀行のジョン・クライアンCEOは5月31日の会議で、ロンドン経由で行われているユーロ圏の取引を中心に業務がロンドンから離れていくだろうと述べた。
*シティグループは行員に対し、離脱ならば業務をEU域内全体に「リバランス」する必要があるだろうと警告した。
* モルガン・スタンレーは離脱ならば約1000人を数年をかけて英国から他の国に移すことを検討していると、事情に詳しい関係者が今月述べた。
*ゴールドマン・サックス・グループは離脱ならば一部のオフィスを欧州大陸に移す見込み。
*UBSグループのアクセル・ウェーバー会長は先に、英国がシティーにダメージを与えないような合意を勝ち取れると確信していると述べた。
原題: What Would Brexit Really Mean for Firms in London’s City?: Q&A(抜粋)
(2016/6/17 05:00)