[ オピニオン ]
(2016/7/18 05:00)
日本企業に今、「イスラエルブーム」が巻き起こっています。イスラエル企業の買収や提携が増え始めたほか、4日に都内で開かれた「イスラエルIoTフォーラム」には300人近い参加者が押しかけ、会場は満杯状態。来日したスタートアップと熱心に情報交換する企業関係者の姿も目立ちました。
イスラエル経済産業省チーフ・サイエンティストのアヴィ・ハッソンさんは同フォーラムで「毎週のように日本のデリゲーション(代表団)がイスラエルを訪れている。個人的にはとてもハッピー」としながら、「皆さんもぜひ来て、自分の目で見てください」と呼びかけていました。
実はこれまでにも、「ハイテク国家」イスラエルに関心を持つ日本企業はけっこうあったものの、アラブ諸国への配慮や「危険なのでは」との思いからか、二の足を踏んでいたのが実情でした。それが、この2年で政府間交流が急速に進み、状況が一変。この辺り、「政府が後押しするなら」「他社に後れをとりたくない」という日本企業の親方日の丸・横並び意識も見え隠れします。もちろん、企業のスタートアップへの見方が変わり、ホットな分野であるサイバーセキュリティーやIoT、フィンテック、ヘルスケアなどで豊富な知見を持つイスラエル企業と手を組みたいという思惑もあるでしょう。
実際、人やモノの低コスト位置追跡システムを提供するパワータグズCEOのヤニブ・レイベンバックさんは、今回のフォーラムに手ごたえを感じている様子。「10社以上が当社のシステムに関心を示し、中には研究開発協力など明確な提案もあった」といいます。
ここで指摘しておきたいのは、両国の関係強化には民間の貢献も大きいという点です。スタートアップ支援企業のサムライインキュベート(東京都品川区)は、創業者でCEOの榊原健太郎さんが2014年5月から自らテルアビブに移住し、支社を設立。「日本はノーアクション」と冷ややかだったイスラエル関係者を驚かせました。現地のスタートアップに投資したり、スタートアップイベントを開いたり活発に活動し、19日からも、同社の協力でTIS主催によるイスラエル企業を対象にしたフィンテックのハッカソンが現地で開かれます。
「イスラエルのユニークさは、何より官民や企業をつなぐコネクティビティーがあること」とハッソンさん。両国の間に芽生えた「つながり」から、今後どんなイノベーションが生み出されるか、大いに期待されます。(デジタル編集部長・藤元正)
(2016/7/18 05:00)