[ 政治・経済 ]
(2016/8/18 05:00)
政府・与党は2017年度税制改正の焦点の一つに所得税改革を位置づける。経済財政諮問会議(議長=安倍晋三首相)の民間議員は、配偶者控除や企業の配偶者手当について、年内に見直しの道筋を示すよう政府に提言。政府税制調査会(首相の諮問機関)は9月から本格議論に着手する。労働人口が減る中、働く女性の弊害となっている税制を見直して経済再生につなげる。ただ控除見直し後の税負担の公平性確保など、課題も少なくない。 (編集委員・神崎正樹)
【103万円の壁】
諮問会議の民間議員は「103万円の壁」と言われる配偶者控除や、妻の所得が一定額を超えると支給の対象外となる夫の配偶者手当見直しを提言。中でも配偶者控除は、働く妻を持つ夫の所得税負担の軽減が本来の目的だが、妻の年収が103万円を超えると控除の適用除外となり、夫の税負担が増える。
厚生労働省の「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」が4月にまとめた報告書では、有配偶者女性のパートタイム労働者の21%が、年収103万円を超えないよう就業調整している。配偶者控除や配偶者手当に設けている配偶者の収入制限がネックとなり、女性の能力が十分に発揮されていない。
【専業主婦は増税】
こうした控除・手当てを見直すことで女性の社会進出を促し、所得の増額が消費を喚起する好循環が回り出すことが期待される。
ただ課題もある。配偶者控除を廃止・縮小した際に発生する財源は、子育て支援など若い世帯への歳出を手厚くすることが想定される。子どもが独立した共稼ぎ世帯や専業主婦世帯は増税となる可能性があり、税収中立の原則で税負担の公平性を確保するのは難しい。
【賃金原資維持を】
安倍政権は14年に配偶者控除の廃止・縮小を検討しながら、結論を得られなかった。妻の収入によらず、一定額を控除する「夫婦控除」などの選択肢が浮上しているが、議論は曲折も予想される。
一方、企業が支給する配偶者手当の廃止・縮小は、社員のモチベーション低下を招きかねない。このため厚労省の検討会は報告書で、見直しの留意点として賃金原資総額の維持を指摘。廃止した配偶者手当分を基本給に組み入れた事例などを紹介している。また報告書は労使による真摯(しんし)な話し合い、従業員の納得性を高める企業の取り組みも求めた。
公平・中立な税制・制度をいかに確立するか、政権が掲げる「働き方改革」の行方を占う当面の焦点となる。
(2016/8/18 05:00)
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