[ オピニオン ]
(2016/9/19 05:00)
日本の昇降機大手3社が、エレベーターの速度競争を繰り広げている。超高速機は日本勢の独壇場で、技術力を分かりやすく内外に示す狙いがある。ただエレベーターの技術競争は速さに限らない。別の競争軸も持つべきではないか。
営業運転中のエレベーターでは、東芝エレベータ(川崎市幸区)が台湾・台北市の高層ビル「台北101」に納入した分速1010メートルが最高速だ。世界で初めて“分速1キロメートル”を突破し、地上382メートルの89階まで39秒で到達する。
これを追い抜こうと日立製作所は同1200メートル、三菱電機も同1230メートルの技術開発を完了。ともに納入先となる中国の高層ビルの完成を待っている。超高速機は実際に納入する高層ビルが建たないと日の目を見ない。両社はようやく、実力を発揮する機会に恵まれた。
分速1000メートルを超える領域には、今のところ海外メーカーが割って入る気配はない。日本勢の技術が優れていることを示すものだが、それをエレベーター事業の競争力の差ととらえるのは早計だ。
世界最大手、米オーチス・エレベーターの日本法人の開発拠点である「OEC―J」の山田敦所長は「速度は技術テーマの一つではあるが、必ずしも顧客の求める1番ではない」と話す。エレベーターに求められる価値についてスタンスの違いが垣間見える。
確かに超高速機が必要なのは数百メートル級の高層ビルという限られた分野だけだ。自動車業界の「F―1」レースのようなものだが、これが必ずしも市販車の技術力に直結していないのと同じことだろう。
昇降機業界にもIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)技術の波が押し寄せている。日立の佐藤寛執行役専務は「人に寄り添う開発にこだわりたい」という。これまで以上の快適さと安全さ、省エネルギーで故障を予知できるエレベーターが求められる。日本勢はこの分野でも最先端の技術力を誇るが、それを分かりやすく競争する方法がほしい。
(2016/9/19 05:00)
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