- トップ
- 科学技術・大学ニュース
- 記事詳細
[ 科学技術・大学 ]
(2016/10/24 05:00)
東芝は英BTグループと共同で、通信インフラに必要なコストを抑えた実用的な新しい量子暗号通信システムを開発した。2地点間のデジタル暗号鍵の生成に、原理的に盗聴が不可能とされる「量子暗号」を利用。暗号鍵の生成に使う光子信号は、暗号化する銀行などのデータと同一のファイバー上で送るため、通信インフラに必要なコストを減らせる。両者は英国で量子通信ネットワークの開発プロジェクトに参画しており、2017年にも通信回線が一部完成する見通しだ。
実用化へ向けて英国で初となる量子暗号通信の顧客向け展示コーナーも開設した。量子暗号通信の本格的なビジネス応用をにらんで売り込みを急ぐ。
展示コーナーはBTの研究所内に置き、量子暗号通信を次世代のサイバーセキュリティー対策技術として提案する。銀行などでやりとりするデジタル情報のハッキングを防ぎ、安全な金融取引を行うための量子暗号通信の活用法やそのメリットなどを紹介する。
量子暗号通信は、光ファイバー上で光子を使って暗号鍵を送る仕組み。生成した暗号鍵は、サイト間を流れる機密情報の暗号化や認証に使う。光子は第三者が盗聴を試みた瞬間にその符号が変化して検知されるため、絶対的な安全性が保証される。
英国にある東芝欧州研究所はBTと、量子暗号通信を光ファイバー通信ネットワークに統合する技術開発で協力している。14年に毎秒10ギガビット(ギガは10億)、15年に同100ギガビットのデータ信号を運ぶファイバー上で量子暗号鍵を送ることに成功した。東芝は20年ごろの実用化を目指している。
量子暗号通信を使えば、例えば金融取引において、個人情報や生体認証データ、銀行の取引証明などの機密情報を、銀行の支店と離れた場所にあるデータセンターに安全に送れる。データセンターの多くは郊外にあり、個人や銀行の情報を安全に送ることが現在の課題になっている。
(2016/10/24 05:00)