[ 建設・住宅・生活 ]

戸田建と京大、建物のワイヤレス給電を20年以降に実用化−壁・床から家電充電

(2016/10/25 05:00)

  • 京都大学教授・篠原真毅氏

戸田建設は京都大学の篠原真毅(なおき)教授(ワイヤレスパワーマネジメント〈WPM〉コンソーシアム代表)と共同で、無線でオフィスや住居内の電気製品に電力を供給できるシステムを開発している。建材にワイヤレス給電装置を組み込み、壁や床から離れた場所にある電気製品を充電する。配線工事が不要になり、将来の技能労働者の減少にも対応できる。2年後に室内全体に給電できる試作室をつくり、2020年以降の実用化を目指す。(編集委員・村山茂樹)

ワイヤレス給電を建材に適用する取り組みは、建設業界では初めてだ。戸田建設は現在、室内全体をワイヤレス給電できるようにするため、さまざまな角度から検討している。壁面や床、天井の建材などについて、施工性や安全性、耐震性やコストなどをチェック。課題をクリアした上で、縦・横4メートル程度の試験室をつくる方針だ。

同装置の開発を担当する森一紘特定プロジェクト部次長兼技術企画課長は「18年度までにワイヤレス給電の試験室をつくり、20年以降からは建物に採用できるようにしたい」と意欲をみせる。

戸田建設は建物でのワイヤレス給電について、篠原教授が主導する「直流共鳴方式」を採用する。同方式は直流の電気を、送電共振機構に断続的に与え、送電と受電の両共振機構を相互に作用させ電気を送る仕組み。直流から交流への変換ロスがなくなり、電力供給の効率が高くなる。

ワイヤレス給電装置は送電回路と送電コイル、共鳴回路などを組み込んだ複合材で構成する。壁面から約50センチメートル離れた所まで給電できる。篠原教授は室内全体の給電システムについて「技術的にはできる」と指摘する。

建材にワイヤレス給電装置を組み込んで施工できれば、複雑な配線工事が不要になる。今後増えてくる建物のリフォームにも対応しやすいほか、将来の技能労働者不足に備えることができるとみる。

【インタビュー/京都大学教授・篠原真毅氏「電気配線工事が不要になる」】

京都大学の篠原真毅教授は「直流共鳴方式」のワイヤレス給電を推進するWPMコンソーシアムの代表を務め、産業界への普及に力を尽くしている。同方式の特徴や可能性について話を聞いた。

―直流共鳴方式の仕組みは。

「従来のワイヤレス給電は直流を『高周波にする』『送電する』といった2段階を経るため、それぞれ回路が必要だ。直流共鳴方式は送電と受電の回路が共振し、直流をそのまま送電できる」

―建物で直流共鳴方式を採用します。

「建物でワイヤレス給電をするには、距離や位置の融通がきく方がいい。施工性を考えると、ワイヤレス給電装置を壁材として活用でき、簡便で距離が取れる直流共鳴方式が適している」

―建設分野におけるワイヤレス給電の可能性は。

「これまでワイヤレス給電は車と携帯電話で着目されてきたが、建設分野でのインパクトは大きい。建物を改修する場合、ワイヤレス給電の建材を取り付けるだけで電気配線工事が不要になる。壁も床も全部がコンセントになるようなイメージだ」

(2016/10/25 05:00)

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