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[ エレクトロニクス ]
(2016/11/3 05:00)
ルネサスエレクトロニクスなど日系半導体メーカーが戦略の練り直しを迫られている。震源は米クアルコムによるオランダのNXPセミコンダクターズの買収だ。成立すれば、各社が成長軸とする車載半導体市場の勢力図が塗り変わる。呉文精ルネサス社長は「セキュリティーや堅ろう性など強みを伸ばしてトップシェアを握る」と気を吐くが、海外勢に対抗するには単独では難しく、他社との連携の強化が必要だ。半導体業界で過去最大の買収は、日本の業界再編の呼び水となるか。(政年佐貴恵)
【一括提案強みに】
車載半導体市場では自動運転向けがビジネスの本丸で、単品販売よりも一括提案が大きな競争力となる。ルネサスはソフトウエア企業やLSI(大規模集積回路)ベンダーなどとコンソーシアムを作るなどして、自社でカバーできない分野の強化を進めてきた。
さらに世界中で起こるM&A(合併・買収)の波に乗る形で、米インターシルの買収も決定。弱点だった電源系のアナログ分野を強化し、制御用マイコンから情報処理まで「自動運転の全てをルネサスが引き受けられる体制」(大村隆司常務)を目指してきた。呉社長も「(現状で)パズルのピースが全てあるとは思わない」と次のM&Aを示唆する。
だがクアルコムが買収を成立させるとアナログからマイコン、無線通信まで幅広くカバーでき、トータルソリューションを行える体制が整う。また研究開発の効率化と巨額の開発資金の確保により、ルネサスがリードしてきた先進技術も脅かされる恐れがある。
【競争は厳しく】
自動運転向けの画像処理半導体を手がける東芝は、現時点で直接の影響は少ないとみる。ただ「今のラインアップでは足りない」(同社幹部)と危機感も示す。そこで人工知能(AI)技術やアナログ技術などで他社との連携を模索し始めた。一方で自動運転市場を見据え、画像分野を取り込みたいと考える半導体メーカーは多い。東芝の競合であるイスラエルのモービルアイなどが他社との連携を強化すれば、競争環境はより厳しくなる。
IHSテクノロジーの大山聡主席アナリストは「単独での生き残りは難しく、今後も世界では攻めの再編が起こる」と指摘する。しかし日本では不採算事業の切り出しという側面が残り「産業全体で、きちんとした成長のシナリオを描けていない」と危惧する。
クアルコムの狙いは自動車だけでない。同社の最高経営責任者(CEO)、スティーブ・モレンコフ氏は「コネクテッドワールドに向けた半導体を実現できる原動力になる」と、IoT(モノのインターネット)分野への本格参入も示唆した。
次世代産業で利用される半導体分野で覇者になろうとする動きが世界中で活発化している。資金力に乏しい日本はどう戦うのか。勝ち残るための成長戦略が求められる。
(2016/11/3 05:00)
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