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[ 科学技術・大学 ]
(2016/11/29 05:00)
2015年で開所50周年を迎えた大林組の技術研究所は、建物に設置することで地震の揺れを大幅に減らせる制震装置の開発などを手がける。所内では研究者同士のコミュニケーションを活性化させる環境を整えるなど、研究開発体制を強化している。
オフィスでは、専門分野の異なる研究員が90×16メートルの1フロアに一堂に会する。同研究所の勝俣英雄副所長は、「分野ごとに研究者が分散していたころに比べ、コミュニケーションの回数と質が高まった」と手応えを語る。15年放送のドラマ「下町ロケット」の撮影に使われるなど、明るく開放的な空間だ。
研究所には制震システム「ラピュタ2D」を採用する。地震が起きると地盤の揺れをセンサーが感知。揺れの大きさや方向から、コンピューターが地盤の動いた距離を即時に割り出し、地面の動きと反対方向に建物を動かして地震の揺れを打ち消す。
従来の免震システムは、地面の揺れの3分の1から5分の1程度まで建物の揺れを低減するのが一般的だった。これに対し、ラピュタ2Dは、30分の1から50分の1まで建物の揺れを大幅に減らせる。地震が発生しても、空中に静止しているかのように全く揺れないという。
ラピュタ2Dは工場などの生産施設をはじめ、原子力関連施設などへの採用が期待されている。さらに建物全体だけでなく、特に重要な部屋や機器に対しての適用も可能。病院の手術室や博物館の展示室などへ導入すれば、地震発生時の事故が起きる可能性を減らせる。
勝俣副所長は今後の研究について、熊本地震を対象にした研究が耐震技術の向上につながると見る。熊本地震では、地震の規模を示すマグニチュード(M)6・5の地震が発生した2日後にM7・3の地震が発生。「建物が2度の強い揺れに耐えた理由について基礎研究を進めれば、耐震に関する応用研究につながる可能性がある」と力を込める。
(福沢尚季)
(火曜日に掲載)
▽所在地=東京都清瀬市下清戸4の640▽電話=042・495・1111▽主要研究テーマ=環境、エネルギー、災害対策、短工期・ローコスト、自動化・省力化▽研究者数=約160人
(2016/11/29 05:00)