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[ 科学技術・大学 ]
(2016/11/30 05:00)
大阪大学大学院工学研究科の中野貴由教授、當代光陽(とだい・みつはる)助教、松垣あいら助教、阪大超高圧電子顕微鏡センターの永瀬丈嗣准教授らは、生体用のハイエントロピー合金(用語参照)の開発に成功した。従来の生体用チタン合金の1・7倍の高強度の上、純チタンと同程度の生体親和性(細胞増殖性)を備えている。5年後をめどに骨代替用のインプラント(人工関節)としての臨床研究を目指す。
新合金はチタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、モリブデンで構成する新しいタイプのハイエントロピー合金。生体用ステンレス合金に比べ、生体親和性に優れ、純チタンにも匹敵する。細胞の増殖性は鋳造材に適切な熱処理を施し、向上させた。
従来、インプラントに用いる生体用金属材料は、細胞との適合性の観点から利用できる元素に制約があり、多元素で構成するハイエントロピー合金の開発は難しかった。そこで中野教授らは、生体用インプラントとして各元素の分量を最適化し、新たな合金設計の概念を構築した。今回、開発した生体用ハイエントロピー合金は、高強度と、細胞の増殖など生体適合性に優れることを見いだした。
中野教授と連携実績がある人工関節製造の帝人ナカシマメディカル(岡山市東区)で研究開発を担当する石坂春彦取締役は、「新しいタイプの生体用合金だ。人工関節のステム部などへ応用できる可能性がある」と期待、今後の共同開発を視野に入れている。
【用語】ハイエントロピー合金=5種類以上の金属元素から構成される多元素合金で、複雑な元素間の結合状態から高強度、高温耐熱性など、従来の合金と全く異なる種類として分類される新合金。元素間のさまざまなパラメーターによって合金設計する。これまで医療用に利用してきた貴金属やステンレス鋼、チタン、チタン合金などの生体用金属材料とは性質や合金設計手法が異なるため、新たな生体用の金属材料として期待される。
(2016/11/30 05:00)
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