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[ 科学技術・大学 ]
(2016/12/21 01:00)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は20日20時、地球付近の宇宙空間の高エネルギー粒子を調べる科学衛星「ジオスペース探査衛星ERG(エルグ)」を搭載した小型固体燃料ロケット「イプシロン」2号機を、内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付町)から打ち上げた。同2号機は約13分後に分離し、打ち上げは成功した。3か月間の初期運用などを経て正常運用段階に移行する。
JAXAは打ち上げに成功したエルグの愛称を「あらせ」と発表。JAXA宇宙科学研究所ジオスペース探査衛星プロジェクトチームの篠原育プロジェクトマネージャは愛称の由来について、「宇宙空間の中で荒々しい高エネルギー粒子に満ちた場所に衛星がこぎ出していくことと、打ち上げ場所付近を流れる荒瀬川にちなんで名付けた」と明らかにした。
イプシロンの打ち上げ成功は2013年9月以来3年3か月ぶり2回連続。イプシロンシリーズでは、500キログラム程度の小型衛星の打ち上げを想定している。2号機では打ち上げコストを1号機と同等に抑えつつ、軌道上への衛星の打ち上げ能力を1号機に比べ30%増の590キログラムに向上させた。イプシロンの開発費は2、3号機合わせて60億円。2号機の打ち上げ費用は安全管理にかかる費用を含めて50億円。
今後、17年度打ち上げ予定の同3号機や、20年打ち上げ予定の新型基幹ロケット「H3」の開発などに今回の知見をつなげる。
内閣府の豊田俊郎大臣政務官はイプシロンについて、「近年、小型衛星の打ち上げニーズが高まっており、こうしたニーズに応えられる」と期待を寄せる。JAXAの奥村直樹理事長も「今回の打ち上げ成功は商用化に向けた第一歩。3号機には衛星への衝撃を和らげる工夫を施す。衛星を載せる顧客のニーズに寄り添ったサービスを提供したい」と商用化に向け、展望を語った。
さらに、今後のロケット開発について、JAXA第一宇宙技術部門イプシロンロケットプロジェクトチームの森田泰弘プロジェクトマネージャは、「2号機は若手が中心となり作ったもので、若い人がロケットを開発していく下地ができた。今後、付加価値を高め世界に負けないロケットを開発していきたい」と意気込んでいる。
(2016/12/21 01:00)