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[ 自動車・輸送機 ]
(2017/1/3 11:30)
米シリコンバレーの電気自動車(EV)ベンチャー、ルーシッド・モーターズ(メンロパーク)は、イスラエルのモービルアイと提携したと発表した。ルーシッドがEVの第1弾として2018年に発売予定の高級EV「ルーシッド・エア(Lucid Air)」に、モービルアイの自動運転技術を導入する。当初は高度運転支援システム(ADAS)として提供し、その後、車載ソフトウエアの自動アップデートによって自動運転機能を使えるようにする計画だ。
高級EVセダンのルーシッド・エアはフロントとリアにそれぞれ駆動モーターを配置したパワートレインを持ち、出力は合計1000馬力、航続距離は400マイル(約640キロメートル)。リチウムイオン蓄電池は戦略提携関係にある韓国のサムスンSDIが供給する。このほか、同社は韓国のLGケムともリチウムイオン蓄電池について戦略提携を結んでいる。
ルーシッドが高級EVで先行する米テスラ・モーターズのライバルの1社と目される中、両社は何かと関連が深い。モービルアイはテスラ車の自動運転支援機能「オートパイロット」のパートナーだったが、16年5月のテスラ「モデルS」でのオートパイロット使用中の死亡事故の後、責任の所在を巡って両社の関係が悪化し、提携を解消。今度はルーシッドがモービルアイと組むことになった。
さらに、ルーシッド・モーターズ自体、テスラ副社長を務めたバーナード・ツェ氏が創業し、幹部も含めテスラからの移籍組が多い。うちピーター・ローリンソンCTO(最高技術責任者)兼副社長は、テスラ時代にエンジニアリング担当副社長でモデルSのチーフエンジニアを兼ねていた。テスラの戦略とモデルSを知り尽くした人物が、テスラキラーの開発の指揮を執っていることになる。例えば、オートパイロットのように車載ソフトウエアの自動アップデートで車両に新機能を追加するやり方も、もともとはテスラが業界に先駆けて導入したものだ。
一方、昨年12月に発表したルーシッド・エアは、カメラ、レーダー、ライダー(レーザーレーダー)といった自動運転に必要なセンサー類をあらかじめ車両に内蔵。モービルアイは、8台のカメラから得られる画像を360度のサラウンドビュー画像に変換する「EyeQ4」チップセットや、カメラ、レーダー、ライダーの画像データを統合して解析し、リアルタイムに車周囲の環境モデルを作り上げるセンサー統合ソフトウエアを提供する。それに加え、自車の位置を高精度に分析するモービルアイの「REM(ロード・エクスペリエンス・マネジメント)システム」と自動運転の強化学習アルゴリズムも組み込む。ちなみに、モービルアイからテスラに提供されていたチップセットは1世代前の「EyeQ3」だった。
モービルアイは、自動運転に必要な中核技術を持つ企業として注目され、16年7月には独BMW、米インテルと3社共同で2021年の量産を目標に完全自動運転車の開発に乗り出すと発表。そのほか米GM、独フォルクスワーゲン、日産、自動車部品大手の英デルファイなどとも提携関係を結んでいる。昨年12月末には、アウディ、BMW、ダイムラーのドイツ高級車ブランド3社の傘下にあるデジタル地図サービスの独ヒア(HERE)との提携を明らかにしている。
ルーシッド・モーターズは07年創業。当初はバッテリーを開発していたが、14年から自動車開発に取り組み、16年12月にルーシッド・エアを発表した。それに先立ち10月には、社名もそれまでの「アティエヴァ」から変更。16年11月にはアリゾナ州に工場を建設すると発表した。それによれば、18年に量産を開始し、22年までに最大2000人を雇用するという。
(2017/1/3 11:30)