[ オピニオン ]
(2017/2/2 05:00)
IT業界は直接の雇用創出には結びつきにくいが、実は他産業の雇用拡大を左右する。その人材育成は重要だ。
米国のトランプ新大統領の求めに応じるかのように、米国内の雇用拡大を宣言する企業が相次いでいる。意外だったのは米アマゾン・ドットコムが「今後1年半で米国内で10万人を新規雇用する」と名乗り出たことだ。IT関連企業にも、それだけの社会的影響力が生じたことがうかがえて興味深い。
米国では数年前から、製造業の行き過ぎた海外移転を見直す動きがある。人件費比率が小さく、生産量の比較的少ない製品から米国内回帰が始まっている。トランプ大統領の一連の発言には、こうした流れを加速させる狙いが見える。
自動車業界のように波及効果が大きく、目立つ業界は標的にされがち。その半面、企業も雇用増の規模を示しやすい。IT関連の多くは産業構造がソフトウエア中心になっている。社外への業務委託も珍しくないため、製造業に比べて雇用拡大の効果が分かりにくい。
アマゾンの場合は、物流拠点の増設などによる受け皿を加えることで、新規雇用の具体的な増加目標を示した。
ただIoT(モノのインターネット)を追い風に、ITに関連したイノベーションを生み出す動きは加速する一方だ。米国でも製造・流通業はもとより、農業やインフラなどあらゆる面でIT活用が広がり、雇用拡大に貢献していくとみられる。
もっともITの活用や、その先の人工知能(AI)は省人化・無人化につながる。トランプ政権が、これらをどう見ているかは分からない。
日本でもIT人材の重要性が増すことは間違いない。労働力の不足をITで補う手法も問われる。調査会社のガートナーによると、2020年末までに日本のIT人材は質的に30万人以上の不足に陥るという。
政府は産業界に雇用拡大を求めるだけでなく、こうした人材育成を進め、日本から多くのイノベーションを起こすことに取り組むべきだ。
(2017/2/2 05:00)
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