[ オピニオン ]
(2017/5/30 05:00)
世界の自動車部品業界で企業の再編やM&A(合併・買収)の動きが目立つ。背景にあるのはIT化や電動化といった自動車業界を襲う「100年ぶりの大変革」である。日本の部品メーカーは競争力をいかに保ち続けるか、真剣に考える時だ。
米インテルのM&Aは象徴的だ。自動ブレーキなどに使われる視覚センサー大手、イスラエルのモービルアイを153億ドル(約1兆7500億円)で買収する。同社のセンサーは日本車にも搭載が増えつつあり、収益性、成長性とも高い。巨額の買収は、パソコンの「ウィンテル連合」のように、将来の標準技術になることを想定しているようにも見える。
2015年の独ZFフリードリヒスハーフェンによる米TRWオートモーティブの買収も記憶に新しい。約135億ドル(約1兆4600億円)を投じた大型買収により、ZFはロバート・ボッシュやコンチネンタルと並ぶ独3大メガサプライヤーの1社として生まれ変わった。
米ジョンソン・コントロールズの再編も興味深い。事業規模こそ大きいが、収益性の低かった自動車シート・内装事業を16年に「アディエント」社として分割。ビル設備などを手がける本体は電池を除く自動車部品から撤退した。大胆な事業ポートフォリオ見直しの一例だ。
こうした海外勢のドラスチックさに比べると、日本勢の再編はいかにも小粒だ。主流は依然として、完成車メーカーとがっちりした関係のもとですり合わせ型の部品開発を進めるビジネスモデル。完成車メーカーごとに重複する開発も多く、業界全体を水平統合する標準的な部品は生まれにくい。
今後、自動車の電動・IT化が進めば、パソコンや家電製品のように水平分業・組み合わせ型なモノづくりへとシフトする可能性がある。そうなると海外のメガサプライヤーによるシステム提案や強い標準化部品に、日本勢は一気に負けてしまう可能性がある。競争力を維持するするために、日本の自動車部品業界はM&Aや事業再編をためらうべきではない。
(2017/5/30 05:00)