[ 機械 ]
(2017/2/8 05:00)
【超大型横形マシニングセンタFH1600SW5i】
建設機械や航空機などの製造現場で用いる大型工作機械の需要が旺盛な北米市場。そこを管轄する米国現地法人からの求めで開発を始めたのが、ジェイテクト製工作機械で最大となるこの機種だ。
そもそも生産経験がない規模なので「既存の製造設備に合わない」(磯谷秀逸工作機械開発部標準機開発室主査)という壁にぶつかる。工場を建てた建設会社に床の強度を相談した際の答えは「コンクリートが割れる」。
改良工事の費用は数千万円。投資回収の不安から「一時は開発中止の話も出た」(同)が、米国法人の強い要望から工事に踏み切った。
主軸はこれほどの大型機が行う重切削の負荷に耐えられるモノが手持ちになく、一から作り始めた。コスト抑制のため許される主軸の重さは3トン。この制限の中で高剛性を確保しなければならない。3次元解析でハウジングの最適な形状を探りつつ、ジェイテクトの軸受事業部と条件にあう主軸用軸受を開発して解決にあたった。
また「主軸周りの軸受に近い形の部品は、そうした加工が得意な軸受事業部で内製し、コスト削減につなげた」と同部ユニット開発室第1グループの大川雄司さんは振り返る。
加工物を載せる回転テーブルも大きさに悩まされた。強力なブレーキ機構が課題だったが、「ブレーキの機能を持たせているシリンダーを工夫して能力を上げた」と同部標準機開発室切削グループの大塚義夫さんは話す。
自動工具交換装置(ATC)もしかり。大型化にあわせ、一つだった駆動用モーターを初めて二つに。これで途中で止めた際の復帰動作などの制御が複雑化した。停止した際のいろいろなパターンを想定し、その制御法をしらみつぶしに探るのに、「3―5倍の時間がかかった」(安藤正典メカトロ制御技術部工作機械制御技術室開発グループ主任)。
巨大であること自体がさまざま障害を生んだ今回の開発。工作機械事業部だけでなく、軸受事業部や取引先などさまざまなパートナーとのシナジーでハードルを越えていった。
(名古屋・江刈内雅史)
【製品プロフィル】
振り直径3200ミリメートル、高さ2200ミリメートル、積載質量8000キログラムまでの工作物を積載可能な超大型の横型マシニングセンター(MC)。従来、門型MCと横中ぐり盤の2台が必要だった大物部品の加工を1台に集約できる。回転テーブルの許容トルクはクラス最大の2万4000ニュートンメートル。直径150ミリメートルの大径クイルや、クイル主軸移動にデュアルボールネジ駆動を採用して送り剛性を高め、安定した切削能力を誇る。
(2017/2/8 05:00)