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[ 中小・ベンチャー ]
(2017/2/9 05:00)
中小企業向け会計ソフトの普及が期待される中、国税関係の帳簿書類を電子データ化して保存する方法について新たなリスクが表面化している。ソフトの導入によりコスト削減や業務効率化といった効果が見込める半面、法的要件を満たさない場合は中小企業側が不利益を被る可能性があるためだ。ソフトを提供するベンダーと利用する企業側の双方とも電子保存の規定への十分な注意が求められている。(古谷一樹)
【大きなメリット】
国税関係の帳簿書類に関して、税法では紙で保存するのが原則。この中で“特例”といえるのが電子帳簿保存法で認められた「スキャナ保存」だ。一定の要件を満たせば領収書や請求書、見積書などを電子データ化して保存できる。
電子保存の利点は大きい。書類の保管や運搬のコストと手間を大幅に軽減できるほか、税務調査の際に領収書などの証憑(しょうひょう)書類を探す時間を短縮できる。これらのメリットに加えて、安価で使いやすい会計ソフトの販売やITの普及促進策が下支え役となり、中小企業でも電子保存が浸透しつつある。
スキャナ保存に関する規定が見直されてきたことも導入促進につながっている。ハード面もその一つ。2016年度の税制改正では、スキャニングする装置について「原稿台と一体型に限る」という要件を廃止し、スマートフォンとデジカメを対象に加えた。
これにより、出先にいる営業担当者がスマホの撮影機能で領収書をデータとして読み取り、経理担当者のパソコンに送付するといった利用法が可能となった。場所や時間の制約を受けずに電子化できるため、経費精算業務効率の一層の向上が見込める。
【事前承認が必要】
ただし、帳簿書類を電子保存する際には、注意すべき点がある。事前に税務署へ申請して承認を受け、使用する会計ソフトに関しても一定の要件を満たす必要がある。例えば、入力後にデータを訂正・削除する場合、それらの履歴を残すことが求められる。
現時点では、ソフトを提供するベンダー側の留意が十分とは言い難い。実際、普及しているソフトの中には、こうした要件を満たしていないケースが見受けられるという。
要件を満たさないソフトを使用する際には、企業側は帳簿書類を紙で保存しなければならない。逆に電子保存のみで紙を廃棄してしまった場合、青色申告による税法上の特典が取り消される可能性があるなど、企業側に不利益が生じる。
こうしたリスクを懸念した国税庁は16年12月、会計ソフトのベンダーなどで構成する税務システム連絡協議会に対し、電子保存に関して周知の徹底を求める文書を出した。「要件を満たしていないソフトの場合、ベンダーはマニュアルにその旨を明記すべきだ。一方、使う側の企業は帳簿書類をきちんと紙で保存してほしい」(国税庁課税部課税総括課)と、双方に注意の徹底を呼びかけている。
(2017/2/9 05:00)
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