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[ 医療・健康・食品 ]
(2017/3/10 05:00)
西アフリカでエボラ出血熱が流行したのは記憶に新しい。当時、パンデミック(世界的大流行)を危ぶむ声もあった。コレラやマラリア、新型インフルエンザなど感染症の流行は20―30年の周期で繰り返される。このためパンデミック対策は「もし起きたら」ではなく「いつ起きるのか」という前提で論じなければならない。こうした中、国連の世界食糧計画(WFP)とNECは9日、パンデミックが発生した際の救援物資の輸送状況を可視化する「物流情報管理プラットフォーム」を共同開発すると発表した。(編集委員・斎藤実)
【一刻を争う】
パンデミックが起きると、その対策は一刻を争う。感染発生国に対して防護服や医療器具といった物資を素早く届け、医療関係者や患者らに確実に物資を行き渡らせることが不可欠だ。
両者は、こうした輸送の重要性に着目。物資の在庫や輸送状況を可視化して一元管理する「パンデミック・サプライチェーン・システム」の構築を目指す。物資の追跡機能やリポート機能、既存の物流システムとのデータ連携機能、感染症発生国の倉庫管理機能を提供する予定。7月をめどに同システムの第1段階を完成させて稼働に入る。
システムの対象地域は輸送インフラの整備が不十分な新興国。WFPはパンデミック時に必要な物資を手配し、中間倉庫から感染発生国に届ける工程を担当する。一方、NECは物資が各国に届けられた後、病院などに運ぶ物流の可視化や既存の物流システムとの連携などを担う。システムの開発を後押しするため、日本政府も100万ドルの資金を拠出する。
【エボラ熱教訓に】
この取り組みはグローバル・パンデミック・サプライチェーン(PSC)ネットワークの活動の一環。同ネットワークは2014年に西アフリカでエボラ出血熱が流行した際、物資が感染地域に迅速に届かず、対策が遅れたことを教訓にして翌15年に創設された。
メンバーはWFPや世界保健機関(WHO)、世界銀行などの国際機関と、医療製品を販売する米ヘンリー・シャインやUPS財団などの民間企業・団体で構成する。
NECはアジアの企業として初めてPSCネットワークに参加した。遠藤信博NEC会長は同日に都内で会見し「今回の取り組みを通して、国連が掲げる『持続可能な開発目標(SDGs)』の達成にも寄与できると確信している」と意義を強調。その上で「パンデミック対策に、人工知能(AI)などの革新的な技術も活用したい」と言及した。
【BCPとは別に】
一方、アーサリン・カズンWFP事務局長は「我々は(西アフリカで起きた)エボラ出血熱の感染で教訓を得た。次のパンデミックの危機に備え、医薬品や救援物資の供給網の見える化をNECと共に進めたい」とコメントした。
近年、地震などの緊急時に備えて事業継続計画(BCP)を策定する企業が増えている。ただパンデミックに対するBCPについては“別建て”で考える必要がある。
(2017/3/10 05:00)
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