[ オピニオン ]
(2017/3/31 05:00)
この1年間の成果と課題をしっかり検証し、消費者や産業界が期待する電力の安定供給と料金の低減に向け、改革を続ける必要がある。
2016年4月の電力小売り全面自由化から1年。政府は、既存の電力会社と新規参入事業者の競争を促し、電気料金の抑制とサービスの向上を目指した。だが、この恩恵が及ぶ地域は今のところ大都市圏に限られる。市場性が薄くて新規参入が少ない地方部に、自由化の波をどう行き渡らせるかは今後の大きな課題だ。
競争が盛んな一部地域でも、新たな料金・サービスが消費者の便益にどれだけかなうかは疑問だ。消費者の中には料金体系が複雑で比較しにくいとの批判がある。小売り各社が通信サービスなどとのセット値引きに力を入れたためで、もともと利幅が薄い電力小売り分野での価格競争が生んだ弊害と言える。
最近の原油価格の上昇で火力発電の燃料価格が上がり、利益の確保はさらに難しくなった。こうした中で経済産業省は、電力各社が水力発電や原子力発電でつくった低コストな電力を一部拠出させる「ベースロード電源市場」の創設準備を進めている。健全で公正な市場の設計と、この前提となる原発の再稼働が急がれる。
ただベースロード電源からの電力拠出を巡っては、産業界への安価な電力の供給に支障を来さないかとの指摘もあり、この点への配慮も不可欠だ。
人口減少や省エネルギー化に伴う需要減退への対応も重要だ。各社はいずれ事業構造を抜本的に見直し、電力小売りだけに頼らない収益基盤を確立する必要に迫られる。
東京電力グループは省エネ志向の強まりを逆手に取り、省エネ関連の事業を収益の新しい柱に据える。電力の使用データを新しいサービスに生かすビッグデータビジネスも、新規需要獲得のカギとなる。
小売り各社には価格競争だけに偏らず、こうした切り口で顧客満足度を高め、持続的成長を遂げることでエネルギーの安定供給に貢献してもらいたい。
(2017/3/31 05:00)
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