[ オピニオン ]
(2017/4/3 05:00)
再生可能エネルギーで発電した電気の固定価格買い取り制度(FIT)が改正された。太陽光に偏った普及を改め、風力やバイオマス発電を含むバランスのとれた導入を進めたい。
4月からの新制度は、2012年7月の施行後、初の改正。大きな変更点は未着工の事業計画の認定取り消しだ。政府が認定した太陽光発電設備は8000万キロワットだが、稼働したのは3000万キロワットだけ。電気の買い取り単価が高かった初期の計画に未着工が多い。
部材価格が下がるまで建設を延ばしたり、認定された計画を丸ごと第三者に転売しようとするなどの悪質な事例があるとされる。こうした計画の取り消しによって本当の再生エネ導入量が明らかになり、同時に将来の国民負担も予想可能になる。
FITで電力会社が再生エネ発電所の電気を買い取る費用は、電気代に「賦課金」を上乗せして賄う仕組みだ。当初は太陽光のみで1キロワットあたり0・03円だった上乗せ額は、16年度には同2・25円、17年度は同2・64円と増加している。一方で政府は30年までの再生エネの累計導入量を1億3000万キロワットが望ましいとしている。実質的な国民負担である賦課金を抑制することが求められよう。
また新制度では、買い取り価格が従来の1年ごとの改定から3年分の提示になった。住宅用太陽光は17年度から毎年、同2円ずつ価格が下がり、安い地域だと19年度は同24円となる。これは一般的な家庭用電力の単価を下回る水準だ。
このほか陸上風力は毎年、同1円ずつ低下。バイオマス発電と水力、地熱は17―19年度の3年間は同じ価格を設定した。発電事業者は計画を立てやすくなり、機器メーカーなどはコスト削減の目安ができる。
残る課題は太陽光偏重の是正だ。FIT開始後の風力、バイオマスの導入量は、いずれも太陽光の50分の1程度だ。今回の太陽光の単価抑制で普及にブレーキがかかることが見込める。再生エネ全体のバランスがとれるようにするためにも、政府には不断の制度見直しを望む。
(2017/4/3 05:00)
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