[ オピニオン ]
(2017/3/27 05:00)
原子力発電所事故の費用負担問題にとどまらず、日本の電力業界の将来図を描く契機にすべきだ。
東京電力ホールディングスの新しい再建計画は、当初想定より大幅に膨らむ見通しとなった福島第一原発の事故処理費用をどう賄っていくかが大きな課題だ。先ごろまとまった計画の骨子では「国際競争力を確保することで福島への貢献」を果たしていく考えを示した。
この柱となるのが、送配電事業や原子力事業で他社との再編・統合に取り組むことだ。規模拡大や効率化による収益力の増強を狙うとしている。
また骨子では、再編後の共同事業体や新会社について、福島関連費用の負担などに関するルールを決めることにも触れている。実質国有化され、いまだ終着点が見えない事故処理の責任を負う東電グループとの事業再編に、他の電力各社が二の足を踏んでいるためだ。
他電力が再編に消極的な理由は、福島関連費用を押しつけられるというリスクだけではない。原子力事業で長年かけて築いた地元との信頼関係が、東電との再編によって揺らぎかねないという懸念がある。送配電についても、業務提携ならまだしも再編・統合する意義はないと各社は考えているようだ。
骨子には、東電の改革をテコに電力業界再編を進めたいという経済産業省の思惑がにじむ。電力・ガスの自由化で先行する諸外国では、巨大エネルギー企業が生まれている。成長著しい新興国市場などの開拓で、これら海外勢に対抗できる企業を日本から創出する狙いがある。
人口減少や省エネルギー志向の強まりで、国内の電力需要は先細りする。この点を踏まえれば海外進出やその前提となる規模拡大、生産性向上はいずれ避けて通れない課題だ。
コストを抑えながら電力の安定供給を続け、並行して海外に事業展開するための戦略をどう描くのか。官民が真剣に議論する必要がある。東電の新しい再建計画を、電力業界全体の国際競争力強化に向けた結集軸にすることはできないか。
(2017/3/27 05:00)
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