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[ 科学技術・大学 ]
(2017/4/9 07:00)
難病である肺線維症をPET(陽電子放出断層撮影)による画像診断で早期に検出したり、治療薬投与後の経過を観察したりするための分子プローブ(標識薬剤)が開発された。米マサチューセッツ総合病院(MGH)やハーバード大学医学大学院などによる成果。実用化されれば診断のために肺の一部組織を取り出す生検が不要になり、患者の肉体的負担も軽減される上、個人ごとの予後に合わせた治療計画が立てやすくなるという。
PETでは、生体に投与された放射性薬剤から放出される陽電子が電子と対消滅して発生する光子(ガンマ線)を体外で検出し、体内の特定部位の活動状況を定量的にイメージ化する。今回、研究チームは放射性ガリウムのガリウム68を使い、肺の損傷部位で異常に産生されるコラーゲンと結びつく薬剤を開発。マウス実験によって肺線維症の広がりを画像化できたほか、治療薬による炎症部位の減少も確認できたという。また、プローブ自体が健康な臓器には蓄積せず、毒性がないことも実験で確めている。
肺線維症はアスベストなど環境汚染物質や、放射性物質への曝露、抗がん剤の副作用などで肺の肺胞や間質が炎症を起こし、線維化して硬くなる疾患。ガス交換が難しくなるため、息切れや呼吸困難といった症状があり、現在、完治させる治療法はないとされている。中でも原因不明の特発性肺線維症(IPF)は進行性が高い。成果は米科学誌のサイエンス・トランスレーショナル・メディシンに6日発表された。
(2017/4/9 07:00)