[ オピニオン ]
(2017/4/17 06:00)
上下階で楕円形の断面形状を微妙に変化させ、風の抵抗を24%少なくした地上120階建ての上海タワー、コンクリートの壁面を軽量かつ耐候性に優れたブロック風の繊維強化プラスチック(FRP)に置き換え、昨年秋に再オープンしたサンフランシスコ近代美術館(SFMoMA)。
米オートデスクのサンフランシスコ事務所内に2008年に設けられたギャラリーでは、同社のCAD/CAM/CAEやビジュアルソフトを使った世界各地での建築物・アート・製品開発のプロジェクトが、パネルや模型、映像などで多数紹介されています。
中には、水量1100トンという巨大な水槽の両側だけでなく、間をつなぐ水中トンネルからも魚たちを間近に見られるようにした2018年オープン予定の上越市新水族博物館(新潟県上越市)はじめ、世界的な建築家である伊東豊雄氏が設計し、盃のデザインを施したユニークな外観に加えて屋内の天井や壁が全て曲面という台湾の台中国家歌劇院(台中メトロポリタンオペラハウス)など、日本にゆかりのプロジェクトも。
3Dプリンター関連では、イクシー(東京都中央区)による筋電義手やカブク(同新宿区)の伝統工芸品の事例が紹介され、伝統と最先端テクノロジーが共存・融合する日本の今をそのまま映しているようにも感じられました。
不思議なのは「ARサンドボックス」という砂場の展示。手で砂を動かすと、それに応じて砂に3次元でデジタルマッピングされている等高線だけでなく、地質や水を表す色とりどりの画像まで砂山の形に合わせて変化する仕掛け。もともとはカリフォルニア大学デービス校の研究者が、地理や地質学、水文学を一般の人に理解してもらおうと始めたプロジェクトで、オートデスクの研究部門とパートナー関係を結び、AR(拡張現実)を駆使した3Dビジュアリゼーションの仕組みを作り上げたそうです。
「オートデスクのソフトを使った映画が、22年連続でアカデミー賞特殊効果部門のオスカー候補にノミネートされているんですよ」。同社広報担当のクレア・コリンズさんがこう話すように、メディア・ビジュアル関係にも食い込んでいる様子。
例えば、リアルなコンピューターグラフィックス(CG)映像で話題になったジェームズ・キャメロン監督のSF映画「アバター」。近く公開予定の続編「アバター2」の制作にも同社のソフトウエアが採用されています。俳優がセンサーを装着して体の動きや顔の表情をCGキャラクターに反映させるモーションキャプチャーのリアルタイム性能が高いため、監督がCGでの演技をすぐに確認できる点が評価されているとのことです。
(2017/4/17 06:00)