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[ 科学技術・大学 ]
(2017/5/4 05:00)
九州大学生体防御医学研究所の福井宣規主幹教授、宇留野武人准教授らは、細胞のがん化を引き起こす遺伝子「Ras」が関連したがんの悪性化に対し、重要な役割を果たすたんぱく質を発見した。さらにこのたんぱく質を阻害すると、がんの増殖および転移を抑制できることを実証した。Rasに変異を持つがんへの治療薬開発につながる。
成果は米科学誌セル・リポーツに掲載された。
研究チームは、変異Rasを持つがん細胞で発現するたんぱく質「DOCK1」を解析。DOCK1は、がん細胞を、浸潤や栄養獲得に適応した形状に変化させる因子「Rac」を活性化する。DOCK1が発現しないがん細胞では、細胞外への浸潤と栄養取り込み機能、細胞生存性がそれぞれ顕著に低下した。
そこでDOCK1を阻害する化合物「TBOPP」を開発。TBOPP処理をしたがん細胞は、DOCK1欠損がん細胞と同様に浸潤や栄養取り込み機能、細胞生存性が低下していた。
マウスにTBOPPを投与すると、高い転移性のあるがんで転移を抑制した。東京大学大学院薬学系研究科の金井求教授、理化学研究所横山茂之上席研究員との共同研究。
Ras遺伝子の変異は、膵臓(すいぞう)がんや大腸がんなど、がん全体の3分の1に起きている。変異Rasを持つがん細胞の増殖と転移を抑制する物質の発見により、難治性がんの治療法薬開発が期待される。
(2017/5/4 05:00)