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[ 科学技術・大学 ]
(2017/5/3 05:00)
京都大学iPS細胞研究所の曽根正光研究員と山本拓也講師らは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製には2種類の細胞代謝のバランスが重要であることを突き止めた。体細胞からiPS細胞へと細胞が初期化される際、「Zic3」と「Esrrb」という2種類の遺伝子を同時に加えると、相乗効果で細胞代謝を制御できる。通常は数%程度の体細胞からのiPS細胞化が約50%と大幅に向上した。
研究グループは、Zic3とEsrrbを加えたマウスの細胞で初期化が劇的に増加することを確認した。続けて細胞代謝を測定。Zic3がiPS細胞で活発な解糖系代謝を促進し、体細胞のエネルギー生産の中心となる酸化的リン酸化を抑制すると分かった。
一方、Esrrbは酸化的リン酸化を活性化する。これらを同時に加えることで、ある程度の酸化的リン酸化を維持しながら、解糖系を活発にすることができ、相乗効果で初期化が進むとみられる。
今後は細胞代謝が初期化に果たす役割を明らかにしつつ、ヒトiPS細胞誘導での代謝の役割を調べる。より高品質なヒトiPS細胞の作製につなげる。
成果は米科学誌セル・メタボリズムに掲載された。
(2017/5/3 05:00)