[ オピニオン ]
(2017/5/23 05:00)
理化学研究所は日本を代表する公的研究機関として、イノベーション創出の先導役への転換を急いでもらいたい。
先ごろ創立100周年を迎えた理研は、総合自然科学の基礎的な研究所として約3000人が所属する。同じ基礎研究でも大学と異なり、グループの単位が大きく大型設備も多い。予算を投じて長期に取り組むテーマで優位性を持つ。独自開発の加速器による113番元素「ニホニウム」の発見が典型例だ。
大型放射光施設「スプリング8」は20年にわたり、国内外の多くの研究成果創出に貢献してきた。近年はライフサイエンス強化の施策が成功し、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の初の臨床応用で注目を集めている。
理研は戦前、研究成果を活用した企業集団“理研コンツェルン”で名をはせた。しかし「財閥解体を経て、戦後は基礎に寄りすぎた」(文部科学省幹部)面がある。1980年代には酵素入り洗剤「アタック」を民間と共同開発したが、近年、こうした例は少ない。理研発のベンチャー企業も20社あるが、決して知名度は高くない。
政府は理研に運営費交付金として年500億円超を投入しており、16年には「特定国立研究開発法人」に指定するなど手厚い支援策を講じている。基礎研究重視の姿勢は多とすべきだが、もっと産業につながる成果があってもいいはずだ。
理研もこうした社会的要請を受け、研究成果の活用の模索を始めた。共同研究、技術移転、ベンチャー支援など多様な手法で成果の最大化を狙う。
一方、理研内部には人事制度改革の動きもある。現在の研究者は9割が任期制で、これは若手の博士研究員を競争環境に置くことで成果を出している。ただ若手の雇用不安というマイナス面も目立つようになり、将来は任期制を6割程度にすることを検討しているという。
松本紘理事長は100周年にあたって「理研は人類が直面する課題の解決と新領域構築に取り組み、未来社会のために注力する」と宣言した。その実現に向けて試行錯誤を期待する。
(2017/5/23 05:00)
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