[ オピニオン ]
(2017/6/2 05:00)
日本が独自の衛星測位システムを確立するには、産業利用の拡大を急ぐ必要がある。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1日朝、準天頂衛星「みちびき」2号機をH2Aロケットで打ち上げ、予定の軌道に乗せた。2010年の試験機に続くもの。年度内にあと2機を打ち上げ、ようやく産業利用に向けた動きがはじまる。
「みちびき」シリーズは米国の全地球測位システム(GPS)の日本版と呼ばれる。人工衛星が発信する電波を使い、地上の位置を把握するシステムだ。日本の真上(準天頂)に1日8時間程度とどまる軌道をとる。3機プラス予備機を併用し、常に上空にいるようにすればビルや山の陰になりにくい。
このため当初は、GPSの補完を期待している。自動運転やスマートフォンなどの位置情報の正確性が増すことになる。将来は7機体制とし、日本上空を3機以上が周回することで、GPSに頼らずに地上の位置を決定できるようにする計画だ。
ただロケットを含めて1機300億円以上とされる「みちびき」を将来も継続的に打ち上げ、年2000億円前後の宇宙予算の相当部分を振り向けることには是非論がある。多少、不便であってもGPSですませていれば、ほとんどコストはかからないからだ。
それでも政府が準天頂衛星の導入を推進しているのは、安全保障上の理由が大きい。いまや自治体の土地台帳にまでGPSが使われる時代である。度量衡と並ぶ最も基本的な位置の情報を、他国のシステムに依存すべきでないという政府の強い意向が働いている。
自前でロケットと衛星を運用できる国は、世界にも数えるほどしかない。日本が独自のシステム構築を目指すのは当然だ。
産業界は、新たな衛星測位システムを、単なるGPSの補完に終わらせてはならない。より魅力的・効率的なサービスを生み出し、アジアやオセアニア諸国にも対象を広げていくことで、日本が独自システムを持つことの意義を明確にしたい。3号機以降の成功を祈念する。
(2017/6/2 05:00)
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