[ オピニオン ]
(2017/6/5 05:00)
2日に閣議決定した「2016年度エネルギー白書」は、政策の見直しに深く踏み込まなかった。原子力発電や再生可能エネルギーなどの電源比率を定めたエネルギー基本計画の見直しが近いためで、今後はそちらが論議の中心になろう。
一方、今回の白書で最も注目されるのは、エネルギー関係企業の再編への期待を強くにじませたことである。主として欧州で、電力とガスをともに手がける大手企業の誕生や、再生エネに軸足を移した企業などの先進事例を紹介した。
また日本の電力・ガス大手は欧州の企業に比べて、海外売上高比率や額で著しく見劣りする現状を指摘。国内需要が頭打ちの中で、早期に体制を整えて海外に進出することを促した。
日本でも昨年は電力の全面自由化、今年はガスの自由化が始まった。制度的な整備が一段落したことから、政府が望ましいと考える将来像を描いたとみることも可能だろう。
ただ日本の業界の現状からは、かなり遠い未来に思える。東京電力と中部電力による燃料調達・火力発電事業合弁のJERA(東京都中央区)のような例外はあるものの、業界内に大手同士の合従連衡の機運は乏しい。また陸続きの欧州と違い、島国である日本のエネルギー企業にとって、海外進出のハードルは高い。
電力・ガス改革の目的は、関係企業の競争力を高め、地域独占に依存せずに事業展開できる力をつけることだ。新規参入企業との競争は当然であり、再生可能エネなど将来性の高い分野へのシフトも期待されよう。ただ、今の時点で将来の業界地図は見通せない。
最も力のあるプレーヤーである既存電力各社は、原発再稼働という重い足カセに苦しんでいる。再稼働が軌道に乗るまでは、大規模投資に及び腰になるのも仕方ないだろう。
再編や海外進出が具体化するのは、早くとも数年後ではないか。電力・ガス改革を軌道に乗せ、どのプレーヤーが優位に立つかを見極めねばならない。まずは足元を固めることだ。
(2017/6/5 05:00)
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