[ 中小・ベンチャー ]

中小企業優秀新技術・新製品賞 開発の舞台裏(4)優秀賞−MSTコーポレーション

(2017/6/22 05:00)

【ワークホルダシステム スマートグリップ】

つかみ代縮小 加工性能最大化

  • ワークホルダーと開発関係者(左から荒田幸一リーダー、吉田圭志取締役技術部長、中西通人技術部C&Rセンター長)

工具ホルダーメーカーのMSTコーポレーションが、5軸マシニングセンター(MC)の加工性能を最大化しようと開発したのが工作機器「ワークホルダシステム スマートグリップ」。同社は2010年に、ワーク(加工対象物)との干渉を抑え加工自由度を高めるためにスリム化した5軸機用工具ホルダーを開発。しかし「工具側だけでは不十分」(中西通人技術部C&Rセンター長)と、14年にワークホルダー側の開発にも着手し全体最適化に乗り出した。

ワンチャッキングで多方向から加工する5軸機は、複雑形状部品や、少量多品種で高価な部品の製作で使われることが多い。しかし異形の複数ワークを自動交換するシステムがないことや、ワークを長時間固定し続ける治具で挟むつかみ代(しろ)は大きく、加工できない領域が小さくないという課題があった。

「固定力と剛性を維持しながらつかみ代を小さく、さらに自動交換に対応しながらも普及しやすい安価な製品」(同)とした。複数要素を成り立たせるシステム開発のカギとなったのは、主軸と工具ホルダーの脱着部の国際標準規格「HSK」を、自動交換対応の油圧クランプ式ヘッドとワークホルダーの脱着に転用すること。ホルダーはつかみ代を小さくするためワークの底面の一部をダブテール(アリ溝)加工して強固につないでいる。

HSKやダブテールはいずれも2面拘束で信頼性の高い要素技術。開発は、それらの既存技術を掛け合わせることを前提として進めた。「独自方式にこだわって良い製品ができても普及しにくく、顧客の役に立てない」(同)と、信頼性と汎用性の高さを重要視。しかも同社にはHSK工具ホルダーの製造インフラと技術を活用して安価に提供できるアドバンテージがあった。

5軸機の加工性能をいかに引き出すかを重視して開発を進めた。しかし、多品種を連続自動加工できるシステムは「予期せず、働き方改革や時短といった世間の流れにも合致」(同)。追い風も受けている。

(東大阪支局長・坂田弓子)

(2017/6/22 05:00)

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