[ オピニオン ]
(2017/6/23 05:00)
中小企業の賃上げが目立った2017年春闘。3月の回答開始当初は人手不足を追い風に大手との格差是正の動きが鮮明になったものの、ここにきて“息切れ感”が出ている。デフレ脱却には労働者の7割を占める中小の賃上げが大きな役割を果たす。7月の最終集計が注目される。
今春闘では自動車、電機など大手製造業のベースアップ(ベア)回答が前年を下回る水準での妥結が相次ぐ一方、人手不足を背景に中堅・中小製造業のほか、食品・流通業など非製造業の賃上げが目立った。製造業や流通、物流企業の人手不足の表れだ。
集中回答を受けた3月17日時点での連合の第1回集計では、賃上げ分が明確に分かる組合のうち、定期昇給(定昇)を含む平均賃上げ率が連合加盟組合平均と組合員数300人未満の中小組合の賃上げ率(同)が2・06%の同率で並ぶ“事件”が起きた。両者の賃上げ率が同率になったのは、94年の3・11%以来23年ぶりのことだった。
トヨタ自動車グループ内では、ベア1300円の「トヨタ超え」を果たした製造業労組がグループ全体の4割に達した。政府から格差是正の要請を受けたトヨタが名目ベアを抑え、その結果、傘下メーカーがトヨタを超えた格好だ。
ただ、回答が進み、6月1日時点の定昇込み賃上げ率は中小の1・87%に対し、1000人以上の大手は2・01%と差が開いた。ヤマト運輸がベア3048円の高額回答をしたことで、大手平均ベア額が1405円に跳ね上がったためだ。もともと中小企業の定昇額は大手と比べて低く、定昇制度そのものがない中小も多い。ベア額も逆転され、ベースが低いベア率だけが大手を上回っている。
賃金格差の是正は、政府が掲げる「同一労働同一賃金」実現のためにも重要だ。連合はサプライチェーン全体が稼いだ利益をグループや下請けに還元するよう主張している。政府も大手企業に対し、中小企業との取引条件改善や現金決済の徹底を求めてほしい。
(2017/6/23 05:00)
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