[ ICT ]
(2017/7/30 14:30)
(ブルームバーグ)サンフランシスコを本拠とする新興企業のメタは、立体的なホログラム画像を現実の世界に重ね合わせられる拡張現実(AR)ヘッドセットを開発した。これを使えば宙に浮かぶ仮想画面上で立体の模型を手で操ったり、ウェブサイトを閲覧したり、電子メールを送信したり、開発コードを書いたりできる。
メタ創業者のメロン・グリベッツ最高経営責任者(CEO)は、モニターやキーボード、最終的には間仕切りで区切られた作業スペースさえをもARに置き換え、「現代オフィスの独裁」と自らが呼ぶオフィス空間の現状を一変させたい考えだ。その実現に向け、メタは従業員を実験台に製品試験を進めている。
米コロンビア大学で神経科学とコンピュータサイエンスを学んだグリベッツ氏(31)は、2012年にメタを創業した。昨年にはレノボ・グループやテンセント・ホールディングス(騰訊)などから5000万ドル(約56億円)の資金を調達。同社製品は建築家やデザイナー、自動車メーカーを含む開発者や企業に使われている。予約注文を受けて販売するヘッドセット「メタ2」(小売価格949ドル)について同社は、17年末までに1万人超が利用すると予想している。
メタが目指すのは、実在する物体を扱うのと同様にホログラムを取り扱え、現実世界をシームレスに拡張させるAR技術の確立だ。そうした技術によりユーザーは、クリックやドラッグ、ボタン押しといった操作をすることなく、手で3次元物体をコントロールできる。コンピューターも間仕切りも、普通の仕事机も椅子もないオフィスで、スタッフがホログラムの回りに集合して共同作業する、という未来のビジョンをグリベッツ氏は思い描いている。
メタの製品試験は、従業員からデータを収集する神経科学者のチームが監督する。同社はまた、製品を実際に使用してみてどうだったかを日々書き留めるよう、従業員に勧めている。
この技術の利点は、実際に手に取ることができる製品を生産する企業には明白だ。試作品のホログラムを実物大で即時投影できるため、例えば自動車メーカーは新車の企画・設計等に必要な時間を短縮できる。普通のオフィスワーカーはそれほどはっきり実感しにくいだろうが、メタの従業員の体験に基づくと、事実上無限のスペースを使って無制限の数の画面を表示できることが生産性を大きく向上させるようだ。
メタの従業員の一人の仕事机にはヘッドセットとキーボードが置いてあるだけ、壁にも賞状と新聞の切り抜きがいくつか貼ってあるだけだ。だがヘッドセットを装着すると、ガールフレンドの写真やスティーブ・ジョブズ氏の胸像、「テスラ3」などのホログラムが姿を現し、別画面ではユーチューブの音楽ビデオが再生される。本物の仕事机の上には、ホログラムの整理棚もある。ARがより身近になる過程が始まったのかもしれない。
(2017/7/30 14:30)