[ オピニオン ]
(2017/8/8 05:00)
ジャパンディスプレイ(JDI)の経営危機が深刻化している。強い完成品メーカーが国内にない分野のデバイスメーカーの難しさを、他の業界でも認識する必要があるだろう。
JDIは2017年3月期まで3期連続の当期赤字だった。そうした中でも、得意としてきたスマートフォン向け液晶パネルを軸に立て直しを目指していた。しかし、この分野が有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)に浸食されたことで先が見通せなくなった。
スマホ向け有機ELパネル市場は、韓国サムスン電子が独走状態にある。自社のスマホに「採算度外視」(証券アナリスト)で有機ELを先行採用し、機能改善を繰り返すことで市場を開拓した。スマホの完成品とデバイスの双方を手がける垂直統合モデルが、独占的地位を築くベースになった。
スマホ市場で競合する米アップルも、今年発売予定の「iPhone(アイフォーン)」の新モデルに有機EL搭載を決めた。有機ELのデザイン自由度の高さを評価したという。
実はJDIも、有機ELのようにデザイン自由度の高い次世代液晶パネルを開発している。技術的評価は高いが、垂直統合で市場を開拓する戦略はとれない。先端技術品を育てる“揺りかご”の不足が現在の苦境につながっている。
サムスンの成功が教えるのは、完成品ビジネスを手がけるメーカーほど強いデバイスを生む可能性が高いということだ。日本の大手電機も、かつては自社製品搭載用の半導体や基幹部品事業を手広く展開した。しかしデジタル機器などの完成品が敗退した現在、各社のデバイス部門もソニーの撮像素子など一部を除き、縮小・撤退した。
日本勢で好調なデバイス専業メーカーもあるが、液晶から有機ELへの転換のような大きな技術革新があった場合、対応できるかどうか不安が残る。デバイス産業の競争力の維持・拡大をどう進めるのか。JDIの警鐘をきちんと受け止めた上で、電機以外の業界でも戦略を練り直したい。
(2017/8/8 05:00)