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[ 科学技術・大学 ]
(2017/9/5 05:00)
京都大学大学院医学研究科の小林亜希子助教と萩原正敏教授らは4日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いてダウン症の出生前治療を可能にする化合物を発見したと発表した。この化合物をダウン症iPS細胞に加えると、神経幹細胞が増加する。妊娠マウスへの投与でも子の症状が改善するのを確認できた。将来的には、胎児期に投薬することで、脳構造の異常を改善できる可能性がある。
研究グループはダウン症で低下する神経幹細胞の増殖を促進する化合物を探索した。
ダウン症に関わる21番染色体上にある遺伝子「DYRK1A」の働きを抑制する化合物を見いだし、「アルジャーノン」と名付けた。
これをダウン症iPS細胞に添加し、神経幹細胞が正常に増えることを確認した。妊娠マウスへの投与では、胎内のダウン症のモデルマウスの大脳皮質の形成異常や学習行動が改善された。
神経幹細胞は成体にも存在して神経新生に関わる。今後、アルツハイマー病などの認知分野やパーキンソン病などの神経変性疾患、うつ症状などへの応用も視野にいれる。
ダウン症は体細胞の21番染色体が1本多く存在することで、過剰な遺伝子の働きが引き起こされる先天性の疾患。1000人に一人の割合で発症し、知的障害や心疾患などの合併症を伴う。新生児に最も多い遺伝子の疾患とされている。出生前診断が可能だが、根本的な治療法は存在していない。
研究成果は米科学アカデミー紀要に5日以降、掲載される。
(2017/9/5 05:00)