[ オピニオン ]
(2017/9/13 05:00)
保育や幼児教育無償化の財源として自民党が「こども保険」の創設を検討している。少子化が進む日本にとって、社会全体で子育て世代を支えることは当然としても、財源を保険料収入に求めることは適切ではない。税財源での予算確保を目指すことが本筋だ。
自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長らは、企業や会社員らが負担している社会保険料に上乗せして徴収する仕組みを提唱している。同時に企業経営者らに自発的な年金の返上を呼びかけている。世論に一石を投じる狙いと推察されるが、財界首脳らは違和感を隠せない様子だ。
日本商工会議所の三村明夫会頭は「例えば消費税を増額し、その一部を振り向けるのが正当な議論」と強調する。財政健全化には「消費税率17%が必要」が持論の小林喜光経済同友会代表幹事も「中途半端な、まやかしみたいなことをやってもしょうがない」と拙速な議論にクギを刺す。
子どもにかける費用は未来への投資であり、経済界は企業負担に一様に反対しているわけではない。高齢者への所得移転に偏った社会保障制度を、子どもや若者重視に再構築すべきだとの認識も強い。4年連続の賃上げ効果が消費喚起につながらないのは、教育費負担が一因との見方も強い。
ただ、消費増税はハードルが高いから、保険の仕組みで徴収しようという“逃げの姿勢”では社会の理解が得られない。社会全体で子どもを育むのであれば、特定の人が負担する枠組みではなく税財源が当然だ。
保険の仕組みで子育て世代を支える構想は、2005年にも浮上した。当時の古川康佐賀県知事が国に提案したが、制度設計には至らなかった。
子どもをめぐる問題は「持つ・持たない」を含め、それぞれの価値観が反映され、求める支援やサービスも異なる。少子化に伴うコストを子どもがいない人も含め、社会全体で負担するには、目先の痛みにとらわれない本質的な議論を通じて理解を得ることが第一歩となるはずだ。方法論はそれからだ。
(2017/9/13 05:00)
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